
楽天モバイルのNB-IoT技術トライアルが拓く、IoT活用の新たな可能性
楽天モバイルが取り組んでいるNB-IoT技術の相互接続試験について、詳しくご紹介します。IoTという言葉は日常的に耳にするようになりましたが、実際にどのような技術が使われ、どんな可能性があるのでしょうか。IoTは「Internet of Things(モノのインターネット)」の略で、これまでインターネットに接続されていなかった様々な「モノ」(家電、車、センサーなど)をインターネットにつなげ、相互に情報をやり取りしたり制御したりする技術や仕組みのことです。
NB-IoTとは何か?基礎から理解する次世代通信規格
NB-IoT(Narrow Band-Internet of Things)という言葉を初めて聞く方も多いかもしれません。これは、IoT機器専用に設計された通信規格で、「狭帯域」と「低消費電力」という2つの大きな特徴を持っています。
簡単に言えば、非常に狭い周波数帯域を使って、少量のデータを低い頻度で送信できる技術です。スマートフォンのように大量のデータを高速でやり取りする必要はないけれど、定期的に少しのデータを送りたい。そんなIoT機器にぴったりの通信方法なのです。例えば、スマートメーターや各種センサーなど、一度設置したら長期間動作し続けてほしい機器に最適です。頻繁に充電したり電池を交換したりする手間が省けるため、インフラ監視や環境測定など、様々な分野での活用が期待されています。
NB-IoTが持つ4つの優れた特長
楽天モバイルのような通信事業者が提供するNB-IoTには、以下のような魅力的な特長があります。
低消費電力で長期運用を実現
優れた省電力設計により、一度設置すれば長期間にわたってバッテリーが持続します。これは、設置場所へのアクセスが困難な場所や、数千・数万台のデバイスを管理する場合に特に重要です。頻繁な充電や電池交換の必要がなくなれば、メンテナンスコストも大幅に削減できます。
広範囲なエリアカバー
全国に既に設置されている携帯電話基地局をそのまま利用できるため、新たにインフラを構築する必要がありません。しかも、従来の携帯電話回線よりも低い周波数帯域を使用するため、電波が遠くまで届きやすいという特性があります。これにより、IoTゲートウェイなどの中継機器を設置しなくても、広範囲なエリアをカバーするIoTシステムを構築できるのです。山間部や地下など、従来は通信が困難だった場所でも安定した接続が期待できます。
高いセキュリティ性
3GPP(3rd Generation Partnership Project)という国際標準化プロジェクトで培われた、セキュアなモバイルキャリアネットワークを利用します。これにより、安全なデータ通信が実現され、重要なインフラ情報や個人情報を扱う場合でも安心です。
安定した高品質な通信
IoTデバイス専用の通信規格として設計されているため、多数のデバイスが同時に接続しても安定したネットワーク品質を提供できます。スマートシティのように、数万から数十万台のデバイスが稼働する環境でも、安定した通信が期待できます。
楽天モバイルが着目した「ガードバンド活用」という革新的アプローチ
楽天モバイルのNB-IoTサービスには、特に注目すべき技術的な工夫があります。それが「ガードバンドの活用」です。通常のモバイル通信では、隣り合う周波数同士が混線しないように、「ガードバンド」と呼ばれる保護帯域を設けています。これは言わば、高速道路の車線と車線の間にある区切り線のようなものです。楽天モバイルは、このガードバンド、つまり従来は使われていなかった周波数帯域を活用する可能性に着目しました。NB-IoTは非常に狭い周波数帯域しか使わないため、既存のモバイル通信に干渉することなく、この空きスペースを有効活用できるのです。これにより、周波数資源を無駄なく使いながら、工場内の設備監視、物流における貨物追跡、スマートシティや広大な農地など、数多くのデバイスを広範囲に設置する場合でも、安定した通信を確保できます。企業にとっては、安心してソリューションを導入できる環境が整うことになります。

実証実験で証明された確かな性能:ASIOT社「A Smart」との接続試験
理論だけでなく、実際の性能はどうなのか。楽天モバイルは、ASIOT社が展開する自動検針サービス「A Smart」との相互接続試験を実施しました。
「A Smart」とは?
「A Smart」は、既存のアナログメーターを後付けでIoT化できる、画期的なエッジAI型の自動検針サービスです。水道、電気、ガス、針式アナログなど、様々な既存メーターに数分で簡単に取り付けることができます。特筆すべきは、電源工事やネットワーク工事が不要という点です。エッジAI技術により、デバイス側で取得したデータを処理してからクラウドに送信するため、通信量を低減し、消費電力も削減できます。まさにNB-IoTとの相性が良いサービスと言えるでしょう。
接続試験の内容と厳格な条件
今回の接続試験では、実際のマンションのメーターボックスという、決して通信に有利とは言えない環境で実施されました。鉄製のドアに一部ガラス窓という、電波が遮蔽されやすい条件です。このような環境下で、スマートメーターを設置し、64Bの数値データと2KB以下の画像データを1時間に1回送信する試験を行いました。さらに、RFテスト(無線周波数の信号を測定・分析するテスト)による通信評価も実施し、科学的な検証も実施しています。
一カ月以上の検証で得られた確かな成果
結果は期待以上のものでした。一カ月以上にわたる長期検証の結果、楽天モバイルのNB-IoTに接続したスマートメーターから、継続的に水道利用量を計測することができました。特に注目すべきは、信号強度を表すRSRP(Reference Signal Received Power)の数値です。試験を実施した3カ所のうち2カ所において、他社のNB-IoT利用時と比較しても高い値が記録されました。これにより、数値データだけでなく画像データも含めて、安定した通信が確認できたのです。
ASIOT社が語る、IoT認証取得の意義と今後の展望
今回の接続試験を経て、「A Smart」は楽天モバイルのIoT認証を取得しました。ASIOT社のご担当者様は、この成果について次のようにコメントされています。
「今回、楽天モバイルのIoT認証を取得したことで、A SmartのIoTエコシステムはさらに進化しました。NB-IoTの活用により、山間部や地下などでも安定したデータ取得が可能となり、地方自治体のインフラ監視やビルメンテナンス、製造業での自動化にも活用が広がると期待しています。今後も現場のDX化と豊かな社会の実現に貢献してまいります」
このコメントからは、NB-IoT技術が単なる通信手段ではなく、社会インフラの維持管理やDX(デジタルトランスフォーメーション)推進の鍵となる可能性が見えてきます。
楽天モバイルが描くIoTの未来
楽天モバイルは、今回の接続試験の成功を機に、さらなる展開を計画しています。様々な業界や用途に対応したNB-IoTソリューションの開発を進め、IoT分野での技術革新とサービス向上に取り組んでいくとのことです。特に注目すべきは、今後の展望です。NB-IoTだけでなく、LTEネットワークや衛星通信なども活用することで、従来は通信圏外だった山岳地帯、離島、海洋などの環境下でも、より低コストで高品質なIoTサービスの提供を目指しています。
IoT活用のヒント:どんな場面で役立つのか
今回ご紹介したNB-IoT技術は、具体的にどのような場面で活用できるのでしょうか。いくつかの例をご紹介します。
インフラ監視
水道管や橋梁、トンネルなど、公共インフラの状態を常時監視することで、異常の早期発見や予防保全が可能になります。特に、人が頻繁にアクセスできない場所での監視に威力を発揮します。
農業のスマート化
広大な農地に温度センサーや湿度センサー、土壌センサーを設置し、作物の生育状況を遠隔で把握できます。最適な水やりや肥料のタイミングを知ることで、収穫量の向上や労力削減につながります。
物流管理
貨物の位置情報や温度管理をリアルタイムで追跡することで、配送の効率化や品質保持が実現できます。特に、医薬品や生鮮食品など、温度管理が重要な商品の輸送で活躍します。
スマートシティの実現
街灯、駐車場、ゴミ箱など、都市のあらゆる設備をネットワーク化することで、エネルギー効率の向上や住民サービスの質を高めることができます。
工場の自動化・効率化
製造設備の稼働状況をリアルタイムで把握し、予知保全や生産性向上に役立てることができます。設備の異常を早期に検知することで、ダウンタイムを最小限に抑えられます。
まとめ:IoT活用の可能性は無限大
楽天モバイルのNB-IoT技術トライアルは、単なる通信技術の検証にとどまらず、私たちの生活やビジネスを変革する可能性を示してくれました。低消費電力で広範囲をカバーし、高いセキュリティ性と安定した通信品質を備えたNB-IoTは、これまで実現が難しかった様々なIoTサービスを可能にします。ASIOT社の「A Smart」との接続試験成功は、その実用性を証明する重要な一歩となりました。今後、楽天モバイルが進める衛星通信との連携や、さらなる通信エリアの拡大により、日本中のどこにいても安定したIoTサービスを利用できる未来が近づいています。インフラの維持管理、農業の効率化、物流の最適化、スマートシティの実現。NB-IoT技術は、私たちの社会をより便利で豊かなものにしていく重要な基盤技術となるでしょう。楽天モバイルの今後の取り組みに、ぜひ注目していきたいですね。
楽天モバイルのNB-IoTの通信技術トライアル:成功事例から紐解く、IoT活用のヒント
https://corp.mobile.rakuten.co.jp/blog/2025/0926_01/
