短編小説「タイタンの存在者」2(全9回)

2.土星の輪の中に
土星の輪の中に光り輝く衛星がある。人類の技術の結晶体、宇宙の開拓地と人は呼ぶ。タイタン!

城を離れて小川の岸に座る。川にはオイルが流れて、目玉の飛び出た魚が、ぷかぷかと浮かび上がる。上流には原子力発電所があり、気がつくと彼の体は原子の炎に包まれていた。ウラン!プルトニウム!コバルト!爆風が全てを灰にして、真っ白な光だけになる。そのままどんどん沈んでいく・・・。彼は今、ヘドロの中にいる。何かが近づいてくる・・・。破滅の生き物だ。泥と一緒に噛み砕かれる彼の小さい頭。天空の暗雲が裂け、光と共に巨大な手が降りてきて、頭のなくなった彼をつかんで空に持っていく・・・・・・気が遠くなる・・・。突然彼は放り出される。地面に叩きつけられる。破滅の生き物が近づく・・・つぶされたそのものは再び動きだす・・・。

「全ての実験も終わって、最終段階として人体実験、いや、つまり、研究員の一人がテスト運転してみたのだ。3ヶ月前にね・・・。ところが、テストに使った男が・・・」
「精神に異常をきたしていたとか?」
「うむ。そう・・・。まあ、そういうことだ」
「本当にその研究員のせいなのか。機械の故障のせいじゃないのだな」
「いや、故障ではない。先日渡したデータの通り、まだ機能している。その研究員、ヨムレイという名前なんだが、実に優秀だった。Aクラス機器を扱える逸材でねぇ。うむ。だが、テストの直前に娘さんが、事故にあって亡くなったのだよ。どうやらそのショックらしいのだが・・・」
クロフツは話し続け、ミロの質問にいくつか答えた。クロフツは、研究員ヨムレイの立体映像を見せた。縮小されたヨムレイは、デスクの上でゆっくりと回転した。一瞬の沈黙の後、追跡者ミロは突然立ち上がった。
「わかった。その男を連れ戻せばよいのだな」
くるりと背を向け、通路へ歩み去った。
クロフツは、自分のデスクに長いこと座っていた。彼が適任なのに間違いない。そして彼なら、事件が機密であることになんの疑いもなく一人で対処するだろう。
端末機から音が流れる。
『・・・リターン』
沈黙・・・。ニヨロークの声が聞こえる。
『追跡者の接続が完了しました。・・・・・・今の時代はテクノロジーが異常に進みすぎた病的な文明を生んでいます。人類を正しく導くためには我らが神が必要であり、もうそこには神が存在しているのです』
「・・・そのとおり。テクノロ神に未来を」
『え?ボス、今、なんておっしゃいました?・・・・・・未来を我らに。リターン』
「リターン」
通信が切れる。クロフツは誰もいない静かな明るい一室で、満足の笑みを浮かべる。