楽天が描くAIの未来図!Google、Ciscoも参加「AI-nization with U」

2025年11月15日、東京の楽天本社を中心に、アジアおよび米国の各拠点を結んで開催された「Rakuten Technology Conference 2025」は、AIとイノベーションの新たな可能性を探求する場となりました。エンジニア主導で毎年開催されるこのイベントには、世界中から技術リーダー、研究者、そして技術愛好家たちが集結し、没入型のデモンストレーション、ダイナミックなステージセッション、そして実践的なブースを通じて、未来のイノベーターたちにインスピレーションを与える体験が提供されました。

今年のテーマ「AI-nization with U」が示すビジョン
今年のカンファレンスのテーマは「AI-nization with U」です。このテーマは、楽天がAIの未来をどのように切り開いていくのか、そしてエージェント型AIのような高度なインテリジェント技術の恩恵を、いかにしてすべての人々に届けるのかというビジョンを体現するものとなりました。「U(あなた)」という言葉には、テクノロジーの民主化と、ユーザー一人ひとりを中心に据えた開発姿勢が込められています。

三木谷会長のキーノート:世界をリードするAIエンパワーメント企業へ
イベントの幕開けを飾ったのは、楽天グループ代表取締役会長兼社長の三木谷浩史氏による基調講演でした。三木谷氏は、楽天が世界をリードするAIエンパワーメント企業となるための継続的な取り組みについて語り、参加者たちに深い感銘を与えました。講演では、楽天が展開する多様なAIサービスが紹介され、AIをすべての人にとってアクセス可能なものにするという企業のコミットメントが強調されました。これはまさに、今年のカンファレンステーマの核心を成すメッセージです。

Google×楽天:次世代の自律型エージェントを動かす力
数多くの魅力的なセッションの中でも、特に注目を集めたのが「Rakuten AI & Google Powering the Next Generation of Autonomous Agents」と題されたパネルディスカッションでした。Google LLCの応用AI工学担当バイスプレジデントであるHamidou Dia氏と、楽天のAIサービス統括部ディレクターである大越拓氏が登壇したこのセッションでは、AIの最前線が語られました。Dia氏は、Googleにおける「AIのパラダイムシフト」について言及し、マルチモーダル技術の進歩が物理的なエージェントの開発を推進していると説明しました。特に、企業が活用できるロボット向けモデルの開発というGoogleの目標が強調されました。一方、大越氏は、GoogleとRakutenのサービスの連携を通じて実現される、さらなるAI開発の可能性について探求しました。両者の対話からは、テクノロジー企業間の協力が未来のイノベーションにとっていかに重要であるかが浮き彫りになりました。

AIセキュリティ:信頼できる明日のために
「Securing AI for a Trusted Tomorrow」と題されたセッションでは、Cisco Systems, Inc.のプリンシパルアーキテクトであるTiju Johnson氏と、楽天のサイバーセキュリティディフェンス部門のバイスゼネラルマネージャーが登壇しました。両者は、AIがもはや単なるツールではなく、現代のビジネスと顧客体験に不可欠な要素となっていることを強調しました。このセッションでは急速に進化する技術環境においてコミュニティを守り、AIを保護することの緊急性が語られました。そして、安全な未来を実現するためには「集団的所有(collective ownership)」と協調的な取り組みが不可欠であるという点で意見が一致しました。この議論は、技術の進歩と安全性の確保が両輪であることを改めて認識させるものとなりました。

エージェント型AIの未来:楽天のビジョン
セッションの締めくくりとして、楽天のチーフAI&データオフィサーであるTing Cai氏が登壇し、エージェント型AIの未来に関する楽天のビジョンを発表しました。Cai氏は、高度なAIアシスタントが各サービスに統合され、体験をパーソナライズし、効率を向上させる「エージェント型の未来」について語りました。また、日本のAIイノベーションをリードするために、AIの構築と他社との提携の両方に取り組むという楽天のコミットメントが強調されました。

Rakuten Technology Excellence Awards:イノベーションとコミュニティの祝福
カンファレンスのクライマックスを飾ったのは、毎年恒例の「Rakuten Technology Excellence Awards」でした。これは、技術開発の限界を押し広げる個人や組織を称える表彰式です。今年の受賞者は、「AI-nization with U」の協力的な精神と前向きなビジョンを体現する貢献をした3組が選ばれました。江間有沙博士、工藤郁子弁護士、実積寿也博士の3名は、広島AIプロセスの一環として、国際的なAIガバナンスに関する認識を高めるための重要な貢献が認められました。半導体設計企業であるAmpere Computing LLCは、相互運用性と柔軟性を可能にし、市場投入までの時間を短縮するプラットフォームの開発で評価されました。Kotoba Technologies, Inc.は、音声生成、翻訳、言語処理といった、エージェント型AIの未来にとってますます重要となる技術における革新が称えられました。これらの受賞者の業績は、毎年このカンファレンスを支えるイノベーションとコミュニティへの共通のコミットメントを反映するものとなりました。

テクノロジーと人をつなぐ航海
Rakuten Technology Conference 2025は、単なる技術展示の場を超えて、AIの未来をどのように形作り、それをすべての人々のために活用するかという重要な対話の場となりました。「AI-nization with U」というテーマが示すように、テクノロジーの進化は決して企業や開発者だけのものではなく、ユーザー一人ひとりと共に歩むべき旅なのです。楽天は、このカンファレンスを通じて、AIという大海原を航海する羅針盤を示し、そこに集う人々すべてが未来の共創者であることを明確にしました。次回のカンファレンスでは、さらにどのような革新的な波が訪れるのか、期待が高まります。​​​​​​​​​

「AI-nization with U」への私見と考察

「Rakuten Technology Conference 2025」に参加し、楽天が「AIエンパワーメント企業」へと変貌を遂げようとする、強い意志と具体的な戦略を感じました。今年のテーマ「AI-nization with U」は、単なる技術スローガンではなく、AIの普及と民主化を目指す楽天の企業姿勢、そして未来のインターネットサービスのあるべき姿を象徴していると思います。

「AI-nization with U」が示すビジョン
このテーマの核心は、AIを「一部の専門家や大企業のもの」から「すべてのユーザー(U)の体験を向上させる日常的な力」へと変えることにあります。
「U」=ユーザー・エコシステム・開発者:レポートでは「ユーザー一人ひとり」が強調されていますが、私は「U」には楽天の巨大なエコシステム全体(楽天市場、楽天カード、楽天モバイルなど)と、カンファレンスに集う開発者・コミュニティも含まれていると解釈します。楽天が描くAIの未来は、単なるサービス改善に留まらず、グループ全体のサービス連携をエージェント型AIが高度に最適化し、個々のユーザーに合わせた「究極のパーソナライゼーション」を実現する点にあるでしょう。
三木谷会長のコミットメント:三木谷会長が「世界をリードするAIエンパワーメント企業」を目指すと明言したことは、AIへの投資と注力を事業の最上位戦略と位置づけたことを意味します。これにより、現場のエンジニアリングが単なる技術開発に留まらず、ビジネス全体の成長エンジンとなることが期待されます。


エージェント型AIへの傾倒
Cai氏の発表からも明らかなように、楽天はエージェント型AIを未来の核と見ています。
これは、従来の「ユーザーがAIを呼び出して使う」モデルから、「AIがユーザーの行動を予測し、能動的に最適なサービスや情報を提供する」モデルへの移行を意味します。
例えば、楽天市場での購入履歴、楽天モバイルの利用状況、楽天トラベルでの旅行計画などを横断的に学習したエージェントが、ユーザーが意識する前に次のニーズを満たすアクションを提案する、といった未来が想像されます。これは、楽天経済圏の顧客体験(CX)を根底から変革するポテンシャルを秘めています。


Googleとの「Powering」な関係
Googleとのパネルディスカッションは、楽天のAI戦略の方向性を強く示唆しています。
Googleのマルチモーダル技術の活用:Dia氏が言及した「AIのパラダイムシフト」と「物理的なエージェントの開発」は、Googleが提供する最先端の基盤モデル(GeminiのようなマルチモーダルLLM)が、楽天のサービス群に深く組み込まれる可能性を示しています。
楽天の「場」の提供:楽天は、Eコマース、金融、通信という、実生活に根ざした膨大なデータとタッチポイントを持っています。Googleの強力なAI技術が、この楽天の「場」で実証され、学習することで、より実用的でパーソナライズされたAIエージェントが生まれるという、相互補完的な協力関係が読み取れます。これは、技術提供者とサービス提供者の理想的な協業モデルの一つと言えるでしょう。


CiscoとのAIセキュリティの議論:信頼性の確保
Ciscoとのセッションで強調された「集団的所有(collective ownership)」は非常に重要です。
AIの進化は驚異的ですが、その複雑性ゆえに、倫理、プライバシー、セキュリティのリスクも増大します。技術的な進歩と信頼性の確保は、現代のAIサービスにおける両輪です。
楽天がこの場でサイバーセキュリティの重要性を強調し、Ciscoのようなグローバルリーダーと議論したことは、単に便利なAIを作るだけでなく、「信頼できる、安全なAI」を提供することへの社会的責任を深く認識している証拠であり、ユーザーが安心してサービスを利用するための重要な担保となります。


アワードの受賞者に見る広がり
「Rakuten Technology Excellence Awards」の受賞者は、楽天のビジョンが技術開発の内部に留まらないことを示しています。
ガバナンスへの貢献(江間氏、工藤氏、実積氏):広島AIプロセスへの貢献を表彰したことは、楽天がAI技術開発だけでなく、AIガバナンスや倫理といった国際的な議論に積極的に関与し、日本のAIイノベーションをリードする立場を明確にしようとしていることを示唆しています。
基盤技術(Ampere)と応用技術(Kotoba):半導体設計とエージェント型AIに不可欠な言語処理技術の企業を表彰することで、楽天がAIの基盤から応用まで、幅広いサプライチェーンにおけるイノベーションを重視していることがわかります。特にKotoba Technologiesへの評価は、エージェント型AIにとって「声」や「言語の理解・生成」が不可欠な要素であることを改めて裏付けています。


AIカンパニーへの決意表明
Rakuten Technology Conference 2025は、楽天が単なるEコマース企業や通信企業ではなく、「AIカンパニー」へと生まれ変わるための決意表明の場となりました。「AI-nization with U」という羅針盤のもと、GoogleやCiscoといった強力なパートナーシップ、技術・倫理の両面での取り組みを通じて、楽天は「AIがサービス全体を貫き、ユーザー一人一人の生活を最適化する」という野心的な未来図を描いています。この動きは、日本のテクノロジー業界におけるAI活用のあり方に、大きな影響を与えるものと期待いたします。

Rakuten Technology Conference 2025: Charting the future of AI-nization with U
https://rakuten.today/blog/rakuten-technology-conference-2025-charting-the-future-of-ai-nization-with-u.html

Rakuten Technology Conference 2025: Charting the future of AI-nization with URakuten Technology Conference 2025 turned Rakuten’s Tokyo HQ and satellite hubs into a vibrant port of innovation and AI-driven exploration.rakuten.today