通信業界の未来を変える3つの言葉:AI-first、クラウドネイティブ、ゼロタッチ(楽天シンフォニー)

通信業界の未来を変える重要な3つの言葉について、楽天シンフォニーの取り組みをご紹介します。現在、単にAIを使っていると宣伝するだけの時代は終わり、実際に効果的な活用ができる企業だけが生き残れる時代になりました。楽天シンフォニーの最高売上責任者ウダイ・カヌコラヌ氏は、この変革に必要な3つの核心的な要素を提示しています。

AI-first:予測対応型への転換
第一の要素はAI-firstです。これは人工知能を既存システムに後付けするのではなく、プラットフォーム全体の中心に据えることを意味します。従来の通信ネットワークは問題が起きてから対処する事後対応型でしたが、AI-firstでは問題を予測して事前に対策を講じる予測対応型に変わります。携帯電話の電波を例にとれば、混雑してから対処するのではなく、AIが混雑を予測して事前に電波を強化するようなイメージです。これは健康診断で病気の兆候を早期発見する予防医学への転換と同じ発想といえます。

クラウドネイティブ:柔軟で機敏なシステム
第二の要素はクラウドネイティブです。これは需要に応じて自動的にリソースを拡大縮小できる弾力性、機能を小さな部品に分けて組み合わせられるモジュール性、そして新しいサービスを迅速に立ち上げられる機敏性を持つ仕組みです。従来のシステムが大きな工場のように設備変更に時間がかかったのに対し、クラウドネイティブはレゴブロックのように必要に応じて素早く形を変えられます。急に動画視聴者が増えた時に自動的にサーバーの処理能力を増やして映像が止まらないようにするのが、この技術の実例です。

ゼロタッチ:判断する自動化
第三の要素はゼロタッチです。これは人間の介入なしに、AIが状況を判断して適切な決定を下すレベルの自動化を意味します。高級車の自動運転機能のように、単に一定速度で走るだけでなく、路面状況や周りの車の動きを見て自動的にブレーキをかけたり車線変更したりする仕組みです。通信ネットワークでも同様に、データの流れを見て自動的に最適なルートを選んだり、セキュリティの脅威を発見して自動対処したりできるようになります。

開発者エコシステムとセキュリティの両立
これらの技術革新を実現するには、開発者エコシステムとセキュリティの両立が不可欠です。通信事業者は内部の革新だけでなく、外部の開発者が通信ネットワークを使った新しいサービスを作れる環境を提供する必要があります。これはAppleのApp StoreやGoogleのPlay Storeのように、アプリ開発者が自由にアプリを作って販売できる場を提供するのと同じ発想です。一方で、オープンなプラットフォームを構築する際にはゼロトラストアーキテクチャ、AI駆動脅威検知、強固なデータガバナンスといったセキュリティ対策が必要です。

リーダーシップの変革とエッジでの革新
こうした変革を推進するには、リーダーシップそのものの変革も求められます。従来の技術管理者は特定の製品やサービスの提供に集中し、部門ごとの縦割り組織で運営していました。しかし未来のリーダーはプラットフォーム全体を俯瞰した思考を持ち、部門を超えた横断的な協力を促進し、迅速で反復的な革新を推進する必要があります。特に重要なのが、ネットワークのエッジ、つまりユーザーに最も近い部分での革新です。ここで独自の価値を提供することで他社との差別化を図れます。

ディスアグリゲーションとAIによる自動化
技術的な課題としては、ディスアグリゲーションがもたらす複雑さがあります。従来一体型だったネットワーク機器を機能ごとに分離可能な構成要素に分けることで柔軟性は向上しますが、統合の複雑さも増加します。この課題を解決するのがAIによる自動化の進化です。従来の自動化は言われた通りの作業をするロボットでしたが、AIによる自動化は状況を見て適切に判断するアシスタントになります。


新しい事業領域への拡大
通信事業者は従来の通信サービスを超えて、新しい事業領域への拡大も進めています。衛星接続は地上の通信インフラが届かない地域でも衛星を通じてインターネット接続を提供します。エンタープライズAPIは企業が自社のシステムから通信会社の機能を直接使えるサービスです。データマネタイゼーションは、通信会社が保有するデータを個人を特定できない形で分析し、有用な情報として販売するサービスです。

変革の真の障壁と段階的アプローチ
こうした変革を進める上で、最大の障壁は実は技術そのものではありません。既得権益に基づくビジネスモデルへの固執と、変化を受け入れることへの心理的な障壁が最大の課題です。効果的な変革のアプローチは段階的な導入戦略です。組織とネットワークが最も準備できている分野から開始し、小さな成功を積み重ねて組織全体の変革意識を醸成することが重要です。

理想的なプラットフォームと実現される価値
最終的な目標は、シンプルで、プログラマブルで、インテリジェントなプラットフォームです。理想的な通信プラットフォームは高級車のようなもので、複雑な仕組みは見えないところに隠れているが運転者は簡単な操作で様々な機能を使え、車が自動的に燃費や乗り心地を最適化してくれます。これにより新サービスの迅速な提供、より豊かなユーザーエクスペリエンス、多様化された収益源の確保が実現されます。

世界の成功事例と未来展望
世界各地の通信事業者が既にディスアグリゲートされたネットワークの活用、オープンAPIによるサービス連携、プラットフォームベースの収益化モデルといった成功パターンを実証しています。これは通信会社が一人で頑張る時代から、外部の企業や開発者と一緒に新しいサービスを作る時代への移行を意味します。

まとめ
通信業界には変革に必要なすべての要素が既に揃っています。既存のネットワークインフラという資産、大量のユーザー利用データ、そして広大なカバレッジエリアという到達範囲です。あとはこれらを統合した革新的なプラットフォームを構築するだけです。これらAI-first、クラウドネイティブ、ゼロタッチの3つの原則を軸に、通信事業者は通信業界の新しい未来を創造することができます。楽天シンフォニーは、その未来を現実のものとするために取り組んでいます。​​​​​​​​​


Think AI-first, cloud-native and zero-touch
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