通信業界の未来を見据えて:自動化から自律化への進化

通信業界は今、大きな転換期を迎えています。ネットワークの規模が拡大し、技術が進化し、顧客の期待が高まる中で、通信事業者は従来の自動化の限界に直面し始めています。では、次のステップは何でしょうか?それは真の「自律化」です。楽天シンフォニーとTelusのリーダーたちが、通信事業者がどのように静的なルールベースのシステムから、動的でインテント(意図)駆動型のアーキテクチャへと移行しているかについて議論を交わしました。この旅路には、技術的な変革だけでなく、組織や企業文化における深い変化も含まれています。

登壇者:
アンシュル・バット
 楽天シンフォニー社 アメリカ大陸営業責任者 兼 プロダクト戦略責任者
アリ・ティズガダム
テルアス社 テクノロジー・フェロー
Future-Proofing Telco: From Automation to Autonomy | Intelligent Growth Series

https://youtu.be/fFRC1ephxWg

動画の説明:2030年に向けた競争において、通信事業者(telcos)は、単に追随するだけでなくリードしていくために、自動化から真の自律性(オートノミー)へと進化しなければなりません。このセッションでは、テルアス(Telus)と楽天シンフォニーの専門家が集まり、通信事業者がどのようにルールベースのワークフローから、インテリジェントで自己管理するネットワークへと移行しているかを探ります。障害解決やプロビジョニング(設定・準備)からトラフィック最適化に至るまで、どのプロセスが初期の自動化から最も恩恵を受けるのか、またインテント駆動型システムがKPI(主要業績評価指標)をどのように再構築しているのかを明らかにします。さらに、議論はAIの透明性、組織の俊敏性(アジリティ)、そして文化的な変化の必要性にも取り組みます。これらは、信頼を勝ち得て、自ら考えるネットワークを構築するために不可欠な要素です。

自律化への道筋を描く

自動化から自律化への移行は、単なる技術の問題ではありません。人材、プロセス、ツールがどのように連携するかを再定義することが求められます。専門家たちは段階的なアプローチを提示しています。それは「デジタル化し、自動化し、そして自律化する」という流れです。そして、この流れは運用上のユースケースによって推進される、堅固な自動化バックログによって支えられています。通信事業者は、設定管理やサービスプロビジョニングなどの分野で初期の成果を上げてきました。しかし、本当の価値は、推論し、イベントを相関させ、自律的に意思決定できるシステムを構築することにあります。そこから真の運用インテリジェンスが形になり始めるのです。

統合されたデータ基盤の重要性

統合されたデータ基盤は極めて重要です。既存のデータソースを再構築することなく統合することで、インテントベースのAPIとドメイン横断的なクローズドループ自動化が可能になります。再利用性も重要な役割を果たします。モジュール式の自動化テンプレートにより、システムは進化することができ、ブロックを組み合わせてより洗練されたワークフローを作成できるようになります。これにより、一度作成した自動化の仕組みを様々な場面で活用でき、効率性が大幅に向上します。

透明性を通じた信頼の構築

自律型ネットワークは新たな複雑性のレイヤーを導入するため、信頼が不可欠になります。専門家たちは、説明可能性、追跡可能性、可逆性、そして安全なアクセスを強調しました。これらはすべて、運用チーム間で信頼を構築する上で不可欠な要素です。サービスへの影響に基づく承認ワークフローや、ジャストインタイムの特権アクセスは、すでに本番環境で実装されている実用的な対策として議論されました。これらの仕組みにより、システムが自律的に動作する場合でも、適切な監視と制御が維持されます。

デジタルツインと継続的検証

デジタルツイン(現実の世界にあるネットワークを、そっくりそのまま仮想空間に再現したシミュレーションモデルのこと)と継続的検証は、この信頼を可能にする要素として注目されています。展開前にシミュレーション環境でテストすることで、オペレーターはリスクを軽減し、自律的な動作が運用上の意図と一致していることを確認できます。デジタルツインを活用することで、実際のネットワークに影響を与えることなく、様々なシナリオを試すことができます。これは、新しい自動化や自律化の機能を導入する際の不安を大幅に軽減し、運用チームの信頼を高めることにつながります。

重要なポイント

ポイント1:人材、プロセス、ツールの三位一体
成功には、実際のインシデントによって推進される自動化バックログ、モジュラーフレームワーク、そしてチーム全体のスキルアップが必要です。技術だけでなく、それを使いこなす人材の育成と、効率的なプロセスの構築が不可欠なのです。
ポイント2:自律化は均一ではない
一部のドメインは他のドメインよりも速く進化していきますが、それで問題ありません。複雑さとビジネス価値に基づいて優先順位を付けることが重要です。すべてを一度に変革しようとするのではなく、最も効果的な領域から段階的に進めていくことが現実的なアプローチです。
ポイント3:設計による信頼の構築
追跡可能なログ、ロールバックメカニズム、安全なアクセス、明確な承認フローは必須です。自律システムが誤った判断をした場合でも、その原因を追跡し、以前の状態に戻せることが、運用チームの安心感につながります。
ポイント4:デジタルツインの重要性
制御された環境での事前テストと事後テストは、不安を軽減し、信頼を高めます。新しい機能や変更を本番環境に適用する前に、デジタルツイン上で十分に検証することで、予期しない問題を未然に防ぐことができます。
ポイント5:AIがドメインギャップを埋める
自然言語のインテントから構築されたRAN固有のrAppsのようなツールは、深いコーディングスキルを持たない通信エンジニアでも自動化を実現できるよう支援しています。これにより、より多くの専門家が自動化と自律化の取り組みに参加できるようになります。

自律型ネットワークの必然性

楽天シンフォニーのAnshul Bhatt氏(アメリカ地域営業責任者兼製品戦略責任者)は次のように述べています。
「自律型ネットワークは、通信事業者が実際にコストの一部でサービスを提供できる唯一の持続可能な方法だと考えています。少なくとも、増大する複雑性を消費者に転嫁しないことで実現できます」
この言葉は、自律化が単なる技術的なトレンドではなく、通信業界の持続可能性を確保するための必然的な選択であることを示唆しています。

これからの通信業界

楽天シンフォニーでは、自律化は単なるバズワードではなく、次世代の運用モデルであると信じています。エージェント型AI、デジタルツイン、インテント駆動型ネットワークが、どのように通信業界の未来を形作っているのかを探求していきます。
通信業界は、ただ自動化を進めるだけでは不十分な時代に入りました。真の自律化、つまりシステムが自ら考え、学習し、最適な判断を下せる環境を構築することが、次の10年間の競争力を決定づけるでしょう。
この変革は容易ではありませんが、適切な人材、プロセス、ツールを組み合わせることで、通信事業者は複雑性の増大に対応しながら、顧客により良いサービスを、より効率的に提供できるようになります。自律化への道のりは始まったばかりですが、その先には、より強靭で柔軟な通信インフラの未来が待っています。​​


Future-proofing telco: From automation to autonomy
通信事業の将来を見据えた対策(フューチャー・プルーフィング):自動化から自律性へ
https://symphony.rakuten.com/blog/future-proofing-telco-from-automation-to-autonomy