楽天グループ、2025年度第3四半期決算 で6年ぶりの営業黒字

楽天グループ株式会社が2025年11月13日に発表した2025年度第3四半期決算は、同社にとって大きな転換点となる内容でした。2019年第3四半期以来、実に6年ぶりとなるIFRS営業利益の黒字化を実現し、売上高も過去最高を更新するなど、モバイル事業への大型投資を経て、ようやく収益性の改善が明確に表れてきています。

全体業績:過去最高の売上高と大幅な利益改善
2025年度第3四半期(7月~9月)の連結売上収益は、6,286億円(前年同期比10.9%増)となり、第3四半期として過去最高を記録しました。注目すべきは利益面の大幅な改善です。連結Non-GAAP営業利益は386億円(前年同期比212.8%増)、IFRS営業利益は80億円(前年同期比1,379.7%増)と、いずれも大幅に増加しています。さらに、第3四半期までの累計期間(1月~9月)で見ると、IFRS営業利益が13億円の黒字となり、2019年第3四半期以来6年ぶりの黒字転換を果たしました。この成果は、インターネットサービス、フィンテック、モバイルの全セグメントが前年同期比で増収を達成したことによるものです。事業活動におけるキャッシュ・フロー創出力を示すEBITDAについても、第3四半期で1,187億円(前年同期比28.8%増)と過去最高額を記録しており、楽天グループの収益基盤が着実に強化されていることが確認できます。

黒字化の主要因:モバイル事業の損失縮小とシナジー効果
決算説明会において、三木谷浩史CEOは「ようやくそこまで来たかと感じている」と率直な感想を述べています。黒字転換の主要因として、同氏は以下の3点を挙げました。

第一に、携帯事業の赤字の大幅な縮小です。楽天モバイルは依然として営業損失を計上しているものの、EBITDAではすでに黒字化しており、損益は急速に改善しています。

第二に、モバイル事業を起点とした様々なシナジーの創出です。楽天モバイルユーザーが楽天市場でのショッピングや楽天カードの利用を増やすという当初の仮説が実証されつつあり、Eコマース、金融事業の成長を後押ししています。

第三に、AI技術の活用によるコスト削減と効率性向上です。三木谷CEOは「ファンダメンタルズが変化している要因の一つとして、AIを活用した様々な工夫が大きく貢献している」と述べ、今後もデータとAIの活用を加速させる方針を明らかにしました。

インターネットサービス。ふるさと納税の駆け込み需要が牽引
インターネットサービスセグメントは、売上収益3,496億円(前年同期比11.1%増)、Non-GAAP営業利益242億円(前年同期比14.5%増)と、増収増益を達成しました。特に注目されるのが、ふるさと納税のポイント付与ルール改定による影響です。2025年10月から総務省による新たなルールが適用されることを受け、9月に駆け込み需要が発生しました。この影響もあり、国内ECにおける流通総額は1兆7,141億円(前年同期比14.5%増)に達しています。

楽天市場を含む国内EC部門のNon-GAAP営業利益は339億円(前年同期比33.6%増)と大幅に増加しました。これは楽天市場や楽天トラベルなどのコア事業の好調に加え、物流事業の料金改定による損益改善も寄与しています。ただし、松村康弘コマース&マーケティングカンパニープレジデントは決算説明会で「短期的には、9月に駆け込み需要があり、第4四半期ではそれが多少リバウンドすると想定している」と述べており、第4四半期には一時的な反動減が見込まれます。一方で、「年内に関しては、トータルでの成長は引き続き見込まれており、需要が前倒しになっただけ」との見解も示されており、中長期的にはふるさと納税市場の成長が継続すると予想されています。

インターナショナル部門では、Rakuten Koboの端末やコンテンツ販売、Rakuten Viberの通信・広告売上が好調で、海外広告事業のコスト構造最適化も進み、Non-GAAP営業利益は4.2百万米ドル(前年同期比78.8%増)と大きく改善しています。

フィンテック。全事業で増収、過去最高益を更新
フィンテックセグメントは、今回の決算で最も輝かしい成果を上げました。売上収益は2,505億円(前年同期比20.3%増)、Non-GAAP営業利益は552億円(前年同期比37.9%増)と、大幅な増収増益を達成しています。

楽天カードは、顧客基盤の拡大と客単価の上昇に加え、ふるさと納税の需要前倒しに伴うショッピング取扱高の増加が寄与し、今四半期のショッピング取扱高は6.7兆円(前年同期比11.7%増)に達しました。リボ払い手数料率の引き上げも収益増加に貢献しています。

楽天銀行は、グループシナジーを活用した口座獲得推進により、2025年9月末時点で1,732万口座(前年同期比6.9%増)を達成しました。メイン口座化・生活口座化の進展に伴い預金残高も増加し、単体預金残高は12.2兆円(前年同期比10.1%増)に到達しています。日本銀行の政策金利引き上げにより金利収益が大きく伸長したことも、大幅な増収増益に寄与しました。

楽天証券は、良好な市場環境を背景に顧客基盤の拡大が継続し、証券総合口座数は1,300万口座(2025年11月時点)に達しました。受入手数料・金融収益の伸長により過去最高収益を記録し、費用増を抑制したことで営業利益も大幅に増加しています。

楽天ペイメントは、「楽天ペイ」アプリを中心とした顧客基盤拡大に伴う取扱高増加が継続し、Non-GAAP営業利益は26億円(前年同期比78.8%増)と大幅に増加しました。コスト水準も低位を維持し、黒字の継続と利益拡大を実現しています。

モバイルEBITDA黒字化、損失は大幅に縮小
モバイルセグメントは、売上収益1,187億円(前年同期比12.0%増)で増収を達成しました。Non-GAAP営業損失は386億円となりましたが、前年同期比101億円の改善となっており、損失縮小のペースは加速しています。楽天モバイル単体で見ると、売上収益は952億円(前年同期比31.2%増)と大幅に増加し、Non-GAAP営業損失は372億円(前年同期比134億円改善)となりました。特に注目すべきは、EBITDAが78億円(前年同期比175億円改善)と黒字化したことです。三木谷CEOは「2025年通期EBITDA黒字化へ順調に進捗している」と述べており、重要なマイルストーンに到達しつつあることが確認できます。

楽天モバイルの全契約回線数は、2025年9月末時点で933万回線、2025年11月7日時点では950万回線に到達しました。前四半期比で40万回線の純増となり、純増ペースは加速しています。この背景には、開通数およびMNP純増数の増加に加え、インフレが継続するマクロ環境下で楽天モバイルの相対的な魅力が向上し、解約率が減少したことがあります。

正味ARPUは2,471円(前年同期比110円上昇)となり、ユーザーのデータ利用量増加に伴うデータARPUが引き続き上昇ドライバーとなっています。三木谷CEOは決算説明会で、「プリマーケティングキャッシュフロー、つまり新規獲得やマーケティング費用を使わなければという前提で言うと、すでに四半期で240億円程度のEBITDAが出ている状況」と述べており、既存顧客からの収益基盤は着実に確立されていることが分かります。

今後の成長戦略について、三木谷CEOは「来年以降も今年と同じかそれを上回るスピードで成長していきたい」との意向を示しました。法人営業についても、中小企業を中心に順調に進展しているとのことです。

財務戦略:国内永久劣後債の起債と格付け見通しの改善
楽天グループは、財務健全性の向上にも積極的に取り組んでいます。2025年10月には、2026年4月に初回コール日を迎えるドル建て永久劣後債のリプレイスメントとして、同社初となる国内永久劣後債を起債しました。格付け会社からの資本認定を得た相応規模の永久劣後債を国内市場で発行する事業会社としては、楽天グループが初めてとのことです。さらに、国内格付機関による格付見通しが「安定的」へ引き上げられるなど、財務健全性に向けた同社の取り組みがマーケットから好感されています。楽天グループは、安定した財務基盤の構築と適切な資本配分による企業価値向上を掲げ、中期的な財務健全性維持を目指しています。

最終損益:依然として赤字も、構造は改善傾向
営業利益が大幅に改善した一方で、第3四半期累計の親会社に帰属する四半期損失は1,134億円となり、前年同期の1,271億円から改善したものの、依然として大幅な赤字となっています。

この要因について、廣瀬正彦CFOは決算説明会で説明しています。税引前利益は改善しているものの、法人所得税費用が290億円から560億円に拡大したことが影響しています。これは、2024年12月に楽天カードがみずほグループから15%の出資を受けたことにより連結納税から外れたことに起因しています。また、非支配持分も増加しており、これらが最終損益の改善を抑制する要因となっています。

ただし、廣瀬CFOは「我々は事業の収益を拡大することによって、今後、さらにその部分についても改善していけるよう努めてまいります」と述べており、事業の収益性向上により最終損益も改善していく見通しです。


AI活用の進展:加盟店と消費者双方の体験を向上
楽天グループは、AI技術の活用にも積極的に取り組んでいます。決算説明会では、AIツールが加盟店の生産性向上に大きく貢献していることが報告されました。

松村プレジデントによれば、加盟店向けには楽天市場関連の業務における生産性向上を可能にするツールを提供しており、すでにほとんどの加盟店がこれらのツールを利用し、非常に多くの肯定的なフィードバックを得ているとのことです。特に、クリエイティブ作成を容易にするツールの提供により、加盟店の業務効率が大幅に向上したといいます。

消費者向けには、楽天AIを楽天市場、楽天トラベル、Rakuten Linkといった既存のアプリケーションに統合しています。Cai CAIDO(最高AI・データ責任者)は「特に漠然とした質問に対し、我々のAIは利用者を漠然とした質問から具体的な行動へと導き、より自信を持って購買行動に移れるよう支援できる」と説明しており、AIがユーザーの購買体験向上に貢献していることが分かります。


今後の展望:シナジーの加速とデータ・AI活用の深化
今回の決算発表を通じて明らかになったのは、楽天グループが長年投資を続けてきたモバイル事業が、ようやく本格的な成果を生み始めているということです。モバイル事業単体での損失縮小とEBITDA黒字化に加え、Eコマースや金融事業へのシナジー効果も明確に表れており、グループ全体の収益性が大きく改善しています。

三木谷CEOは決算説明会で「楽天モバイルに加入することで、楽天市場でのショッピングやカード利用が促進され、モバイルがこれ以上の成長ドライバーとして非常に重要になるという仮説は本当に正しいと感じている」と述べています。金融事業を中心に、Eコマース、トラベル、広告事業も含めて好調であり、その成長の基盤はモバイルから来ているとの認識を示しました。

今後の戦略として、楽天グループは以下の点に注力していく方針です。

モバイル事業のさらなる成長:1,000万契約突破を目指すとともに、来年以降も今年と同じかそれを上回るスピードで成長を継続する。法人営業も中小企業を中心に強化。
シナジーの加速:モバイル、Eコマース、金融の連携をさらに強化し、グループ全体の収益性を向上させる。
データとAIの活用深化:コスト削減や業務効率化だけでなく、顧客体験の向上や新たな価値創造にもAI技術を活用していく。
財務健全性の維持:安定した財務基盤を構築し、適切な資本配分により企業価値を向上させる。

まとめ:転換点を迎えた楽天グループ
楽天グループの2025年度第3四半期決算は、同社が大きな転換点を迎えたことを示す内容となりました。6年ぶりの営業黒字化は、モバイル事業への大型投資が実を結び始めたことの証左であり、グループ全体のシナジー効果も明確に表れています。

ふるさと納税の駆け込み需要という一時的な要因はあるものの、各セグメントの基礎的な収益力が着実に向上していることは疑いありません。特にフィンテックセグメントの好調さは目を見張るものがあり、金融事業が楽天グループの収益の柱として確固たる地位を築きつつあることが分かります。

もちろん、課題がないわけではありません。最終損益は依然として大幅な赤字であり、完全な黒字化までにはもう少し時間がかかるでしょう。また、ふるさと納税のルール改定による第4四半期の反動減や、競合他社の動向など、注視すべき要因もあります。

しかし、全体として見れば、楽天グループは明らかに正しい方向に進んでおり、今後のさらなる成長が期待できる状況にあります。AI技術の活用やデータドリブンな経営により、さらなる効率化と価値創造が進むことも期待されます。


楽天グループ株式会社2025年度第3四半期 決算ハイライトに関するお知らせ
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