2025年の東北楽天ゴールデンイーグルス投手陣振り返り

評価指標
K/9=(奪三振×9)/IP、BB/9=(四球×9)/IP、H/9、HR/9、WP/9、Balk/9、K/BB=奪三振÷四球、WHIP=(被安打+与四球)/IP。 
概観
救援陣の高防御率(西口 1.07、藤平 2.11、西垣 1.96 など)が際立つ一方、先発のイニング消化は苦戦(規定投球回到達は0。最多は岸109.0、藤井109.2、古謝107.0)。チームは「強力救援で先発の不足を補う」構造でした。 

個人成績に基づくレート指標の要点

西口直人
IP 50.2 ERA 1.07
K/9 12.43 BB/9 2.31
H/9 5.15 HR/9 0.53
K/BB 5.38 WHIP 0.83
西垣雅矢
IP 59.2 ERA 1.96
K/9 9.65 BB/9 3.32
H/9 5.88 HR/9 0.60
K/BB 2.91 WHIP 1.02
藤平尚真
IP 59.2 ERA 2.11
K/9 9.95 BB/9 3.01
H/9 6.78 HR/9 0.90 
K/BB 3.30 WHIP 1.09
荘司康誠
IP 76.1 ERA 3.07
K/9 8.24 BB/9 2.94
WP 4(WP/9 0.47)
※制球課題の兆候
岸孝之
IP 109.0 ERA 4.38
K/9 4.54 BB/9 1.82
H/9 10.32 HR/9 0.83
WHIP 1.35
古謝樹
IP 107.0 ERA 3.70
K/9 6.37 BB/9 2.27
WHIP 1.36
藤井聖
IP 109.2 ERA 3.20
K/9 4.75 BB/9 3.53  
WHIP 1.50
早川隆久
IP 68.1 ERA 4.35 
K/9 8.17 BB/9 2.63
HR/9 1.32
WP 3(WP/9 0.39)
BK 1(BK/9 0.13)
WHIP 1.27
ハワード
IP 48.2 ERA 2.22
K/9 6.64 BB/9 2.03
HR/9 0.18(被本塁打1)
WHIP 1.09
ヤフーレ
IP 64.1 ERA 4.48
K/9 4.19 BB/9 3.21
H/9 11.17 WHIP 1.60
加治屋蓮
IP 43.2 ERA 3.50
K/9 7.01 BB/9 3.92
H/9 8.45
WHIP 1.37(HLD18)

救援投手の高防御率と先発投手の課題
西口(52登板、WHIP0.83)、西垣(63登板、1.02)、藤平(62登板、1.09)は、短いイニングで走者を抑えた。先発は規定到達ゼロで、岸・古謝・藤井の3名のみが100回超。中盤以前に救援投入が増え、ブルペン依存が常態化しました。

2025シーズンの活躍投手

西口直人
登板52 ERA1.07
K/BB 5.38 WHIP 0.83 の超効率
西垣雅矢
登板63 ERA1.96
最多登板×WHIP 1.02 の安定
藤平尚真
登板62 ERA2.11
12S+21H=HP23 K/9 9.95
古謝樹
登板19 ERA3.70
ローテ維持+BB/9 2.27
ハワード
登板9 ERA2.22
HR/9 0.18(被本塁打1)で被弾抑制

2025シーズンの不振投手

辛島航
登板2 ERA10.50 H/9 22.50 と炎上
宮森智志
登板10 ERA10.50 BB/9 6.00
H/9 13.50 HBP 3
松井友飛
登板13 ERA6.00 BB/9 6.33 と制球難
ヤフーレ
登板14 ERA4.48 K/9 4.19 H/9 11.17
早川隆久
登板12 ERA4.35 HR/9 1.32 WP3・BK1

突出した成績を挙げた投手

奪三振率 (K/9)
泰勝利
:20.08(6試合6回1/3で14奪三振)。短いイニングながら圧倒的な三振奪取能力を示し、支配的投球を披露。

被本塁打率 (HR/9)
スペンサー・ハワード
:0.18(48回2/3で被本塁打1本)。先発として長打をほとんど許さず、抜群の球威と制球力を発揮。

K/BB (奪三振/与四球比)
西口直人
:5.38。頻繁な登板機会の中で奪三振と与四球を高次元で両立させ、隙の無い投球内容。

登板数
西垣雅矢
:63試合。チーム最多登板でシーズンを通してフル回転し、ブルペンを支えた頼もしき鉄腕。

ホールドポイント (HP)
藤平尚真
:33(12セーブ+21ホールド)。チーム最多のHPを挙げ、勝利の方程式の要として奮闘。

最優秀防御率 (ERA)
西口直人
:1.07。50回2/3で自責点6のみという圧倒的な安定感と失点抑止力で、チーム全投手中トップの防御率を記録。

最優秀投手(MVP)の選定

候補比較
西口直人
 – 52登板で防御率1.07、奪三振70・与四球13(K/BB 5.38)、WHIP0.83。勝ちパターンの中核を担い、登板数・成績ともに群を抜く安定感を発揮。
藤平尚真 – チーム最多のHP33(12S・21H)を記録し、防御率2.11、奪三振66・与四球20(K/BB 3.30)。9回を託されるクローザー兼セットアッパーとして存在感。
西垣雅矢 – チーム最多63登板で防御率1.96、奪三振64・与四球22、WHIP1.02。シーズン通じてフル回転し、安定したセットアッパーとして貢献。
古謝樹 – 先発陣から唯一の候補。19先発107.0回で防御率3.70、与四球率2.27。ローテーションを守り抜き、チームの先発不足を支えた若手柱。

最優秀投手(MVP):西口直人

防御率1.07・WHIP0.83という圧巻の成績に加え、シーズン52試合もの登板数は勝利の方程式を一手に引き受けた証拠です。高頻度の登板にも関わらず安定感を維持し続けた点、そして代替の利かない支配的投球でチームに与えたインパクトの大きさは他を圧倒しています。まさに「量と質を両立」した唯一無二の存在として、西口が今季の最優秀投手にふさわしいと言えるでしょう。

結論

2025年の楽天イーグルス投手陣を振り返ると、救援陣がチームの屋台骨を支え、先発陣の不足を補ったシーズンだったと言えます。西口・西垣・藤平ら盤石のリリーフ陣はリーグでも屈指の安定感で、接戦をものにできた試合も多くありました。一方で先発陣は規定投球回到達者ゼロ、QS率の低迷 、中盤での早期継投が常態化するなど、チーム戦術自体が中継ぎで繋ぐ野球に偏らざるを得なかったのが実情です。救援陣の活躍により最終順位こそ4位と踏み止まりましたが、上位進出には先発投手の整備が不可欠であることを再認識させられる一年となりました。

課題

先発投手の被弾抑制: 早川が今季10被本塁打(HR/9=1.32)を喫するなど、一発で試合を壊されるケースが散見されました。長いイニングを投げる先発だからこそ、被弾率の低減が急務です。
制球難の改善: 若手を中心に四球で自滅する傾向も見られました。例えば松井友飛の与四球率6.33や宮森の6.00は制球難を象徴する数値です。ストライク先行の投球で無駄な走者を減らす意識改革が必要です。
暴投・ボークの減少: 荘司の暴投4、早川の暴投3・ボーク1など、走者背負った場面でのミスが失点に直結しました。セットポジション時のメカニクス見直しやメンタル面の強化が課題です。

2025年度 楽天イーグルス投手陣を振り返って

2025年の楽天イーグルス投手陣は、明暗のコントラストが非常に鮮やかな一年でした。救援陣はリーグ屈指の安定感を誇り、チームの屋台骨として躍動しましたが、先発陣にはイニング消化や被弾抑制といった面で課題が残りました。全体としては、「中継ぎでつなぐチーム」の構図がより鮮明になったシーズンだったといえます。

まず、最も輝いたのは西口直人でした。防御率1.07、WHIP0.83という圧倒的な安定感は、まさに球界トップクラスです。奪三振率(K/9=12.43)と制球のバランスも見事で、ピンチの場面でも淡々と打者をねじ伏せる姿は、精神的支柱そのものでした。52登板というハイレバレッジ運用の中で一度も大崩れせず、勝利の方程式を支え切った功績は特筆に値します。チームMVPの称号にふさわしいシーズンでした。

西垣雅矢も、63登板・防御率1.96と抜群の安定感を見せました。セットアッパーとして淡々と仕事をこなす姿勢は、西口とともにブルペンの精神的支柱となりました。また、藤平尚真もクローザー兼セットアッパーとして12セーブ・21ホールドを挙げ、勝利の方程式を完成させました。藤平は昨季までの課題だった制球が改善し、K/BB=3.30と大きく成長を遂げています。この三人が形成した「終盤三本柱」は、今季楽天の最も誇るべき成果でした。

先発陣に目を向けると、藤井聖がローテーションを守り抜き、チームに安定をもたらしました。防御率3.20、109.2イニング登板という数字は、イニングイーターとしての責任を果たした証です。課題であった四球の多さ(BB/9=3.53)は残ったものの、粘り強い投球で試合を作り、先発陣の柱として存在感を放ちました。

また、古謝樹も防御率3.70と安定した内容で、与四球率2.27と制球面ではチーム内でも高水準を誇りました。決め球不足によって勝ち星には恵まれませんでしたが、先発ローテの一角として十分に機能したシーズンでした。

荘司康誠は76回を投げて防御率3.07と数字上は安定していましたが、暴投数の多さ(WP4)が示すように、制球面でやや不安を残しました。修正が進めば、来季はより信頼度の高い先発として台頭できる可能性があります。

一方、残念ながらハワードは今季限りで退団となりました。怪我などにより登板回数は限られながらも防御率2.22、被本塁打率0.18という優れた内容を残しました。特に球威と制球のバランスは若手投手の良い手本となりました。チームとしても、彼のような低被弾型の先発投手を育成・補強していくことが求められます。

また、開幕投手の早川隆久は防御率4.35と本来の力を発揮しきれず、被本塁打率1.32と一発に泣く試合が多く見られました。手術を経て、再びエース格に返り咲くポテンシャルは十分に秘めています。

不振組では、辛島航・宮森智志・松井友飛らが制球面の不安定さから結果を残せず、特に松井のBB/9=6.33という数値は深刻な課題となりました。これら若手投手が制球とメンタルの両面で成長できるかどうかが、来季以降のチームの底上げに直結します。ヤフーレ投手はH/9=11.17と被安打が多くハワード投手と共に今季で退団となりました。

岸の存在が大きかったです。40歳ながらチーム2位の109回を投げて先発として踏みとどまりました。楽天が連敗を4で止めた6月12日の中日戦。勝利投手となり本拠地のお立ち台で「こんなもんじゃないぞ、イーグルス」と発言したことはチームに勢いをつける契機となりました。8月26日には170勝を挙げました。

総じて、2025年の楽天投手陣は「救援陣の完成度と先発陣の苦戦」という構図に集約されます。西口・西垣・藤平の三本柱による勝利の方程式は球界でも屈指のレベルに達しており、この土台を維持することが今後の最大の強みとなるでしょう。一方で、先発投手がいかにしてイニングを稼ぎ、ブルペンへの負担を軽減できるかが次の課題です。

チームとしては、古謝・藤井を軸にしたローテーションの再構築と、荘司・早川らの再生が重要なポイントになります。また、救援陣の過投を防ぐためにも、6人+スポット枠の柔軟な先発運用を定着させる必要があります。

2025年は苦しい中にも光が見えたシーズンでした。西口を筆頭とするブルペンの充実は確実な財産であり、藤井・古謝の台頭が見られたことで、チーム投手力の再構築はすでに始まっています。ハワード退団という穴をどう埋め、先発陣全体の底上げを図るか。その取り組みこそが、2026年の楽天イーグルス投手陣の命運を握る鍵になるでしょう。