
楽天の通信技術が中央アジアへ。カザフスタンで仕掛ける「未来型インフラ」の全貌
楽天グループの子会社である楽天シンフォニーと、VEONグループがカザフスタンで展開するBeeline Kazakhstanが、次世代通信とデジタルインフラ推進に向けた戦略的協業の覚書を締結しました。両社は、最新のソフトウェアを中心とした通信ネットワークやスケーラブルなデジタルプラットフォームの開発推進に向けて連携します。具体的な協業分野は、Open RANアーキテクチャ、AI搭載のネットワークのインテリジェント化、次世代デジタルプラットフォーム、クラウドソリューション、グローバルIoT、ビジネス向け通信サービスなどの技術検証です。
世界を繋ぐ破壊者と1,190万人の生活を支える巨人。最強タッグの舞台裏
楽天シンフォニーは、クラウドネイティブでオープンかつ自動化されたネットワークアーキテクチャ構築の経験を有しています。楽天モバイルが世界でも先進的に商用利用を実現した大規模な仮想化Open RANネットワーク構築の知見を生かし、通信事業者向けのプラットフォームを含む次世代ネットワークの計画・構築・運用に必要なすべての機能を提供しています。同社は日本に本社を置き、米国、シンガポール、インド、韓国、欧州、中近東アフリカ地域にも現地拠点を置いています。
Beeline Kazakhstanは、1,190万人のモバイル通信契約者と約100万人に固定インターネットサービスを提供しており、カザフスタン国内において強固な市場地位を築いています。同社は2018年よりデジタルオペレータ戦略を推進しており、この5年間でデジタルソリューション開発の専門知識を活用し、60の社内外向け製品からなるエコシステムを構築してきました。Beeline KazakhstanはVEONが過半数の株式を所有しています。
VEONは、世界的なデジタルオペレーターであり、約1億5,000万人の通信サービス契約者と1億4,000万人のデジタルサービス利用者に、統合接続とデジタルサービスを提供しています。世界人口の6%以上が住む5つの国々で事業を展開しており、NASDAQに上場しています。
両雄が語る、新たなデジタル経済圏への決意
楽天シンフォニーの代表取締役社長執行役員であるシャラッド・スリオアストーア氏は、「当社は、通信の未来に対するビジョンを共有する先進的な通信事業者であるBeeline Kazakhstanとの戦略的協業を通じ、VEONとのパートナーシップを拡大できることを光栄に思います」と述べています。さらに、「本合意は、オープンでクラウドネイティブなアーキテクチャを用いて通信の未来を切り拓くという、両社の決意を体現するものです」とコメントしました。
Beeline KazakhstanのCEOであるエフゲニー・ナストラジン氏は、「当社のネットワークとビジネスモデルは、クラウド、自動化、AIにより大きく変革を遂げようとしています」と述べ、「本合意は、効率的で高いレジリエンスを備え、さらに顧客体験を向上できる次世代通信アーキテクチャおよびデジタルプラットフォーム推進への当社の姿勢を示すものです」とコメントしました。
VEONのGroup CEOであるカーン・テルツィオール氏は、「Beeline Kazakhstanは、先進技術をカザフスタンおよび周辺地域の人々に向けて有意義なデジタルサービスとして提供するうえで、一貫してリーダーシップを示してきました」と評価しました。また、「今回の楽天との協業は、VEONにとって、グループ子会社であるウクライナのKyivstar Groupと楽天との協業に続く2例目となり、同社との連携をさらに拡大できることを嬉しく思います」と述べています。
ウクライナからカザフスタンへ。VEON×楽天、加速するグローバル包囲網
VEONと楽天グループの協業は、今回が初めてではありません。両社は2023年8月に、ウクライナのインフラ再構築に向けてOpenRANとデジタルサービス分野における協業で基本合意を結んでいます。さらに、2025年2月13日には、楽天シンフォニーとKyivstarがウクライナ国内でOpen RANの実証テスト開始段階に入ったことが発表されました。今回のBeeline Kazakhstanとの覚書締結は、VEONと楽天にとって2例目の協業となります。

私見と考察:Open RANが引き起こす業界のパラダイムシフト
今回の覚書締結は、グローバルな通信業界において重要な意味を持つものと考えられます。まず注目すべきは、楽天シンフォニーがアジア・中央アジア地域での事業展開を着実に拡大させている点です。日本国内での楽天モバイルの経験を基盤として、ウクライナに続きカザフスタンでも協業関係を構築したことは、同社のグローバル戦略が順調に進んでいることを示唆しています。
Open RANアーキテクチャの採用は、通信業界における大きなパラダイムシフトを反映していると思われます。従来の閉鎖的なシステムから、オープンで相互運用可能なアーキテクチャへの移行は、通信事業者にとってコスト削減と柔軟性向上の両面でメリットがあると考えられます。楽天シンフォニーがこの分野で実績を積んできたことが、今回の協業につながった可能性が高いでしょう。
また、Beeline Kazakhstanが既に60の製品からなるデジタルエコシステムを構築している点は興味深いところです。これは単なる通信事業者から、デジタルサービスプロバイダーへと事業モデルを転換させようとする姿勢の表れと解釈できます。この方向性は、世界的な通信業界のトレンドとも一致しており、今回の楽天シンフォニーとの協業は、この戦略をさらに加速させるための重要なステップになると推察されます。
中央アジアの要衝をデジタル化。経済発展を加速させる「新シルクロード」戦略
カザフスタンは中央アジアにおける経済大国であり、地理的にもアジアとヨーロッパを結ぶ要衝に位置しています。この地域でのデジタルインフラ整備は、経済発展と国際的な接続性の向上に直結すると考えられます。楽天シンフォニーがこの市場に参入することは、中央アジア全体への展開を視野に入れた戦略的な動きである可能性があります。
VEONにとっても、楽天シンフォニーとの協業は重要な意味を持つと思われます。ウクライナでの協業に続き、カザフスタンでも同様の枠組みを構築することで、グループ全体としての技術力向上とコスト効率化を図ることができると推測されます。特に、AI搭載のネットワークインテリジェント化やクラウドソリューションといった最新技術の導入は、競合他社との差別化要因になり得るでしょう。
AIが自律するネットワークへ。次世代インフラが変える運用の常識
今回の協業で注目すべきは、単なる技術検証にとどまらず、実際の商用展開を見据えた包括的な取り組みである点です。Open RAN、AI、クラウド、IoTといった複数の先端技術を統合的に活用しようとする姿勢は、次世代通信ネットワークのあるべき姿を追求する試みと言えるでしょう。
特にAI搭載のネットワークインテリジェント化は、ネットワーク運用の自動化と最適化において大きな可能性を秘めていると考えられます。トラフィックの予測、障害の早期検知、リソースの動的な配分などが自動化されることで、運用コストの削減とサービス品質の向上が同時に実現できる可能性があります。
成功への試金石。長期パートナーシップが描く「通信の民主化」の行方
一方で、この協業が成功するためには、いくつかの課題を乗り越える必要があると思われます。まず、技術的な統合の複雑さです。既存のネットワークインフラと新しいOpen RANアーキテクチャをどのように統合していくかは、技術的にも運用的にも大きなチャレンジとなるでしょう。
また、カザフスタン特有の市場環境や規制環境への適応も重要な要素です。楽天シンフォニーのグローバルな知見と、Beeline Kazakhstanのローカルな知識をどのように組み合わせていくかが、プロジェクトの成否を左右する可能性があります。
長期的には、この協業がカザフスタンだけでなく、中央アジア全体のデジタル化にどのような影響を与えるかが注目されます。成功事例となれば、他の地域や国への展開のモデルケースになる可能性もあるでしょう。逆に言えば、両社にとってこのプロジェクトは、グローバル展開における重要な試金石となると考えられます。
VEONと楽天の協業が2例目となったことは、両社の関係が単発的なものではなく、長期的なパートナーシップへと発展しつつあることを示唆しています。今後、他のVEONグループ企業との協業が拡大する可能性も十分に考えられるでしょう。そうなれば、楽天シンフォニーにとって、VEONは重要な戦略的パートナーとしての地位を確立することになります。
通信業界全体を見渡すと、Open RANやクラウドネイティブなアーキテクチャへの移行は避けられないトレンドとなっています。今回の協業は、この大きな潮流の中での一つの重要なマイルストーンとして位置づけられるのではないでしょうか。両社の取り組みが成功すれば、他の通信事業者にとっても参考となる事例になることが期待されます。
楽天グループの楽天シンフォニーとVEONグループのBeeline Kazakhstan、次世代通信とデジタルインフラ推進に向けた覚書を締結
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