映画評「不思議の世界絵図」(1997年/スロバキア)

1997年/スロバキア/107分 監督:マルティン・シュリーク 出演:ドロトゥカ・ヌゥオトバー/マリアン・ラブダ

2003年11月の銀座シネ・ラ・セットでのマルティン・シュリーク特集は3作とも見たが、この作品が1番強烈だった。他の2作に比べ、この映画だけ獲得した賞がパンフレットに記載されていない。私自身も「なんだこれ?」と久々に感じてしまった映画だ。ストーリーが拡散しすぎて把握できなかった。監督の想像力がすごすぎて私の認識が追いつかなかったのかもしれないが。脇役にストーリーを語らせて、主役を傍観者にさせるのが、この監督の特色だと思った。旅の苦悩が感じられない。地図の意味がよく分からない。お約束的な部分を取っ払って物語が進んでいく。ラストシーンから感じた物悲しさが、この映画の特色だ。主人公はこれからどうなるのか心配になった。主人公は旅をしながらスロバキア文化に別れを告げていたような気がした。主人公と話すのは、集団の中で疎外された人たちだ。鉄道から、結婚式から、会議から、TV番組から、男から、女から、家庭から疎外されている。その疎外された人々からも別れを告げていく主人公の物語が物悲しい。獲得しない物語だ。思わず私の生活を振りかえってしまった。地図というのは先人の書き残したものだ。いろいろな地名がつけられている。この映画で言っていたように名前がないと存在できないのだ。様々な地名はすべて物語を持っている。絵地図は物語の宝庫だ。しかし地図というのは時代と共に変わっていく。映画の舞台となったあの国も、まだはじまって10年しかたっていない。その地図を地中に埋めて、主人公は初めて自分の世界に向き合うことになるのかもしれない。映像の部分では、結婚式などのスロバキア文化が目新しかったので楽しかった。落ち着いた色合いの独特の空間が広がっていた。