
楽天が国内最大規模のAIモデル「Rakuten AI 3.0」を発表。日本語性能でトップを獲得、コスト削減も実現
楽天グループ株式会社が、日本の生成AI開発力強化を目指す「GENIACプロジェクト」の一環として、新たな高性能AIモデル「Rakuten AI 3.0」を開発したことを発表しました。このモデルは、日本語ベンチマークで最高スコアを記録し、楽天のサービス群での活用において最大90%ものコスト削減を実現したとのことです。
GENIACプロジェクトとの連携
今回発表された「Rakuten AI 3.0」は、経済産業省と新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が推進する「GENIAC(Generative AI Accelerator Challenge)プロジェクト」の支援を受けて開発されました。楽天は2024年7月にGENIACの第3期公募に採択され、学習費用の一部について計算資源の補助を受けています。このプロジェクトは日本の生成AI開発力の強化を目的としており、楽天の取り組みは国内AI産業の発展において重要な役割を果たすことが期待されています。
約7,000億パラメータの大規模モデル
「Rakuten AI 3.0」の最大の特徴は、その規模の大きさにあります。約7,000億個のパラメータを持つMixture of Experts(MoE)アーキテクチャを採用した大規模言語モデル(LLM)で、これは楽天がこれまでに開発したAIモデルの中でも最大規模となっています。MoEアーキテクチャの採用により、全パラメータのうち個々のトークンに対しては約400億個のパラメータのみをアクティブ化する仕組みになっています。この構造により、高い性能を維持しながら効率的な処理が可能となっています。具体的には、アクティブパラメータには3つの密な層とエキスパートコンポーネントが含まれ、各トークンは常にアクティブな「共有エキスパート」と8つの「専門エキスパート」を経由する設計です。
日本語に特化した最高水準の性能
楽天が実施した評価では、「Rakuten AI 3.0」は日本語版MT-Benchにおいて8.88という高スコアを記録しました。これは、他の主要モデルと比較しても最高水準の結果となっています。比較対象として挙げられているモデルの中では、GPT-4oが8.67、ABEJA-Qwen2.5-32b-Japanese-v1.0が8.04、qwen2.5-bakeneko-32b-instructが8.01といったスコアであり、「Rakuten AI 3.0」がこれらを上回る性能を示しています。また、楽天の過去モデルとの比較では、「Rakuten AI 2.0」の6.79、「Rakuten AI 7B」の4.35と比べて大幅な性能向上を実現しています。この高い日本語性能は、日本の市場と楽天のビジネスニーズに最適化された豊富で高品質な独自データを用いてファインチューニングを行った成果といえます。これにより、日本特有の言語のニュアンスや文化、慣習をより深く理解できるモデルとなっています。
最大90%のコスト削減を実現
性能面だけでなく、コスト効率の面でも「Rakuten AI 3.0」は優れた結果を示しています。楽天エコシステムのサービスを支える試験において、他社の同規模モデルと比較して、トークン(入力および出力)あたりの費用が最大90%削減されたとのことです。この高いコストパフォーマンスは、MoEアーキテクチャによる効率的な処理と、楽天が独自に設計した社内マルチノードGPUクラスタ上での学習によって実現されています。

セキュアな環境での開発
楽天は、データセキュリティにも配慮した開発体制を整えています。モデルの学習は楽天の隔離された安全なクラウド環境に展開されており、データが外部に送信されることはありません。大規模で複雑なデータセットでの迅速かつスケーラブルな学習を可能とする環境で、安全性を確保しながら開発が進められました。
今後の展開と公開予定
「Rakuten AI 3.0」は、生成AI APIを統合した開発用プラットフォーム「Rakuten AIゲートウェイ」の生成AI API群に加わり、「Rakuten AI」エージェントプラットフォームを通じて楽天のサービスに順次導入される予定です。さらに注目すべきは、来春を目途にオープンウェイトモデルとしての公開も計画されている点です。これにより、楽天以外の企業や研究機関でもこの高性能な日本語LLMを活用できるようになる可能性があります。
経済産業省からのコメント
経済産業省AI産業戦略室長の渡辺琢也氏は、「高い性能を持つ大規模で効率的なAIモデル開発という成果を出されたことを歓迎いたします。この成果の社会実装を通じてAIエコシステムを拡大し、日本のAI産業をリードしていかれることを期待しています」とコメントしており、国としても楽天の取り組みを高く評価しています。
楽天のAI戦略
楽天グループのChief AI & Data Officer(CAIDO)であるティン・ツァイ氏は、「楽天では、小規模なベンチャー企業からグローバルな大企業まで、すべての人々に変革をもたらす高品質でコスト効率の高いモデルの開発に注力しています」と述べています。楽天は独自のモデル開発を通じてLLMに関する知識と専門性を高め、「楽天エコシステム」をサポートするために最適化されたモデルを作り続けています。ショッピング、金融(フィンテック)、旅行、エンターテインメントといった多岐にわたるサービスとシームレスに連携する「Rakuten AI」を活用することで、一人ひとりのユーザーの好みに最適化したサポートを提供していく方針です。
まとめ
「Rakuten AI 3.0」は、日本語に特化した大規模言語モデルとして最高水準の性能を持ち、同時に高いコスト効率を実現した画期的なモデルといえます。GENIACプロジェクトの支援を受けながら開発されたこのモデルは、日本のAI産業の発展に大きく貢献することが期待されています。
来春予定されているオープンウェイトモデルとしての公開により、日本語AIの普及と発展がさらに加速する可能性があります。楽天は今後も豊富なデータと最先端のAI技術を活用し、世界中の人々へ新たな価値を創出していく姿勢を示しています。
楽天、「GENIACプロジェクト」の一環として国内最大規模の新たな高性能AIモデル「Rakuten AI 3.0」を開発
– 日本語ベンチマークにおいてトップスコアを達成、「楽天エコシステム」のサービス活用では最大90%のコスト削減を実現 –
https://corp.rakuten.co.jp/news/press/2025/1218_01.html
