
楽天モバイルが最新プロセッサーで消費電力30%削減に成功
2026年1月29日、楽天モバイル株式会社はインテル株式会社と共同で、5G通信網の基幹システムにおける画期的な検証結果を発表しました。最新の「E-Cores搭載インテルXeon 6プロセッサー」を使用したところ、通信速度を維持しながら消費電力を約30%も削減できることが確認されたのです。
検証の概要
今回の検証は、楽天シンフォニー株式会社が提供するクラウドソリューション「Rakuten Cloud」上で実施されました。対象となったのは、5Gコアネットワーク向けにコンテナ化されたアプリケーションです。重要なポイントは、現在商用展開されているインテル製品と比較して、同等のスループット(データ処理速度)である30Gbpsを維持しながら、消費電力を約30%削減できたという点です。これは、テレコムクラウド環境における電力効率の大幅な向上と、運用コストの削減につながる可能性を示しています。
E-Cores搭載Xeon 6プロセッサーの特徴
今回検証に使用されたプロセッサーは、電力効率に優れた144個もの計算コアを搭載しています。現在商用展開されている製品と比べると、CPUコア数が450%も多いという驚異的な設計となっています。この多コア設計は、多数の軽量コンテナを同時に動かすマイクロサービス型の5Gコアネットワークに最適です。具体的には、モビリティ管理や認証などの制御プレーン機能、音声、動画、アプリケーション通信などのデータ転送処理を、負荷変動に応じてきめ細かくリソース分配し、効率的に処理することが可能になります。
なぜ「E-Cores」が注目されるのか
インテルのXeon 6プロセッサーファミリーには、2つの異なるCPUコアアーキテクチャが用意されています。P-cores(Performance-cores)は高性能重視のコアで、AIやHPCなどの計算集約型ワークロードに最適です。一方、E-cores(Efficient-cores)は電力効率重視のコアで、マイクロサービスなどのタスク並列型ワークロードに最適です。
楽天モバイルが今回検証したのは、後者のE-coresを搭載したプロセッサーです。5G通信ネットワークのような、多数の小さなタスクを並列処理する用途では、E-coresの設計思想が非常にマッチするのです。
業界への影響
楽天モバイルは、完全仮想化クラウドネイティブモバイルネットワークという革新的なアーキテクチャを採用しています。今回の検証結果は、このような次世代ネットワークインフラにおいて、性能を犠牲にすることなく大幅な省電力化が実現可能であることを示しました。特に、データセンターの運用において電力コストは大きな割合を占めるため、30%の消費電力削減は経済面でも環境面でも極めて重要な意味を持ちます。テレコム業界全体のサステナビリティ向上にも貢献できる成果といえるでしょう。
5Gコアネットワークって何?
スマートフォンで通話したり、動画を見たり、メッセージを送ったりする際、実は裏側では複雑な処理が行われています。この処理を担うのが「コアネットワーク」です。簡単に言えば、スマホと通信会社のサービスをつなぐ「交換機」のような役割を果たしています。具体的には、あなたのスマホが本当に楽天モバイルの契約者かを確認したり(認証)、電話をかけたときに相手につないだり(通話制御)、インターネットのデータを正しく届けたり(データ転送)、あなたが移動しても通信が途切れないようにしたり(モビリティ管理)しています。従来はこれらの機能が専用の大型機器で動いていましたが、楽天モバイルは「クラウド」上で動くソフトウェアとして実現しているのが特徴です。
コンテナ化とは?引っ越しがしやすい仕組み
「コンテナ化されたアプリケーション」という言葉が出てきましたが、これは輸送用のコンテナをイメージするとわかりやすいでしょう。船で荷物を運ぶ際、バラバラに積むより統一規格のコンテナに入れた方が、どの船でも港でも効率よく扱えますよね。ソフトウェアの世界でも同じ考え方です。
コンテナ化することで、どのサーバーでも同じように動かせるようになり、必要に応じて素早く増やしたり減らしたりできるようになります。これにより、お昼時に通信が集中しても、夜間の通信が少ない時間でも、柔軟に対応できるのです。
30Gbpsってどれくらい速いの?
検証で達成した「30Gbps」というスループット(データ処理速度)について、もう少し具体的に説明しましょう。30Gbpsは、1秒間に約3.75ギガバイト(GB)のデータを処理できる速度です。
これは、フルHD映画(約4GB)なら約1秒でダウンロードできたり、4K映画(約15GB)なら約4秒でダウンロードできたり、音楽ファイル(1曲5MB)なら1秒間に約750曲ダウンロードできる速さです。もちろん、これは1つのシステム全体の処理能力なので、多数のユーザーで分け合うことになります。それでも、非常に高速な処理能力であることがわかります。

なぜ消費電力30%削減が重要なのか
「30%の省電力化」と聞いても、ピンとこない方もいるかもしれません。しかし、これは実は非常に大きな意味を持っています。経済的なメリットとして、データセンターの運用コストの中で、電気代は大きな割合を占めます。楽天モバイルのような通信会社は、24時間365日サーバーを動かし続ける必要があるため、電気代は膨大です。仮に年間の電気代が10億円だとすれば、30%削減で3億円のコスト削減になります。これは最終的に、ユーザーへのサービス料金にも影響する可能性があります。環境へのメリットとしては、日本の電力の多くは火力発電によるもので、CO2を排出します。データセンターの電力を30%削減できれば、それだけCO2排出量も減らせます。これは、家庭で例えるなら、エアコンの電気代が30%減るようなインパクトです。通信業界全体で考えれば、環境への貢献は非常に大きなものになります。
144コアって何がすごいの?
今回使用されたプロセッサーには「144個のコア」が搭載されています。これは従来製品の約5.5倍です。コアというのは、CPUの中で実際に計算を行う「脳」のようなもので、コアが多いほど、同時に多くの作業ができます。
レストランで例えると、従来のプロセッサーを「シェフ32人のレストラン」とすると、新しいプロセッサーは「シェフ144人のレストラン」です。お客さん(通信ユーザー)が同時にたくさん来ても、シェフが多ければ料理(データ処理)を効率よくさばけます。しかも、144人もいるのに電気代(消費電力)は30%も安いという、驚異的な効率性を実現しているのです。
P-coresとE-cores、用途に合わせた適材適所
インテルのプロセッサーには、2種類のコアがあります。P-cores(パフォーマンスコア)は難しい計算問題を解くのが得意な「スペシャリスト」で、AIの学習や科学計算など、重い処理向きです。パワフルだけど、電気をたくさん使います。一方、E-cores(効率コア)はたくさんの簡単な作業を同時にこなす「マルチタスクの達人」で、通信処理やウェブサービスなど、軽めの処理を大量に行う用途向きです。パワーは控えめだけど、電気を少ししか使いません。
楽天モバイルの5G通信処理は、「大勢のユーザーの通信を同時に処理する」という特性があるため、E-coresが最適なのです。オリンピックの重量挙げ選手より、マラソン選手の方が向いている仕事、というイメージです。
なぜ楽天モバイルがこの技術に注目するのか
楽天モバイルは、他の大手キャリアとは異なる「完全仮想化クラウドネイティブモバイルネットワーク」という新しい仕組みを採用しています。従来の通信ネットワークは専用の高価なハードウェアを使用し、変更や拡張に時間とコストがかかり、電力効率が悪いという課題がありました。一方、楽天モバイルのネットワークは汎用的なサーバーとソフトウェアで構築されており、柔軟に拡張や変更ができ、新しい技術を素早く導入できます。今回のような最新プロセッサーを導入できるのも、この柔軟な仕組みがあるからこそです。従来型のネットワークでは、機器を全部入れ替える必要があり、莫大なコストと時間がかかってしまいます。
今後の展開は?
今回はあくまで「検証」の段階ですが、商用展開されれば、通信品質の向上として、より多くのユーザーが同時に快適に通信できたり、混雑時でも速度が落ちにくくなったり、新しいサービスをより早く提供できるようになることが期待できます。料金への好影響としては、運用コストが下がれば、料金に還元される可能性があり、より多くの機能を同じ料金で利用できるかもしれません。また、環境への配慮として、CO2排出量の削減や持続可能な通信インフラの実現につながります。
技術革新によって環境に優しい通信サービスへ
楽天モバイルとインテルによる今回の共同検証は、5G通信インフラの進化における重要な一歩となりました。高性能と省電力性を両立させることで、より持続可能な通信ネットワークの構築が可能になることが実証されたのです。今後、この技術が商用展開されれば、通信サービスの品質を維持しながら運用コストと環境負荷を大幅に削減できる可能性が広がります。楽天モバイルの革新的な取り組みに、引き続き注目していきたいところです。通信インフラは普段目に見えないものですが、私たちの日常生活を支える重要な基盤です。今回のような技術革新によって、より快適で、より環境に優しい通信サービスが実現されることを期待しましょう。
楽天モバイル、「Rakuten Cloud」上で稼働中の5Gコアネットワーク向けアプリケーションで「E-Cores 搭載 インテル Xeon 6 プロセッサー」の性能を商用展開に向けて検証
– 現在商用展開中のプラットフォームと比較して同等のスループットを維持しながら、消費電力を約30%削減 –
https://corp.mobile.rakuten.co.jp/news/media/2026/0129_01/
