通信業界の大転換:自動化から自律化へ

自動化だけでは限界に
かつて通信業界では自動化が最先端技術でした。システムの設定作業やトラブル対応を自動化していれば、業界をリードする企業として注目されていました。しかし2025年の今、自動化を自慢するのは時代遅れです。まるで最新技術の集まりで、古いスマートフォンを自慢するようなものです。確かに自動化は役に立ちました。作業を速く、正確に、ミスなく実行できるようになったのです。でも、それだけでは足りませんでした。プログラムは頻繁に調整が必要で、システムは夜中に突然止まり、規模を拡大するのも困難でした。あの頃の自動化は誇らしい成果でした。しかし今振り返ると、それは懐かしい過去の象徴であり、未来を語る言葉ではなくなっています。業界はすでに「効率化の時代」から「判断の時代」へと軸足を移しているのです。

自律化とは何か
自律化は自動化の進化版です。単なる言葉の言い換えではありません。自動化は人が作った手順書に従って動きます。一方、自律化はネットワーク自身が状況を判断し、最適な対応を自動で実行します。人の許可を待つことなく、問題を解決するのです。自律化とは「外部の専門家が設計したシナリオ」を実行することではなく、ネットワークそのものが自ら学び、自己修復し、自己最適化することを意味します。システムが自分で考えることこそ、自律化の本質なのです。

なぜ今、自律化が必要なのか
現代の通信ネットワークは複雑すぎて、事前に全ての対応を想定できません。クラウド、無線ネットワーク(RAN)、ネットワークの中核(コア)、衛星通信(NTN)、ネットワークスライシング、専用ネットワーク。これら全てが絡み合い、リアルタイムで完璧なサービス品質を求められています。もはや「こうなったらこうする」という単純なルールでは対応できないのです。だからこそ、システムに「なぜそうすべきか」を教え、最善の判断をシステム自身に任せる必要があるのです。

自律化に欠かせない信頼性
ただし、システムに判断を任せるには信頼が必要です。AIが夜間に数千の設定を変更したとき、責任者は以下を確認できなければなりません。何が変更されたか(ログ)、なぜ変更したか(理由)、元に戻せるか(ロールバック機能)。これらがなければ、ネットワークを運用しているのではなく、賭けをしているのと同じです。

自律化の実際の仕組み
自律化は次の要素を組み合わせて実現します。AI(人工知能)、SMO(サービス管理・調整システム)、各種アプリケーション。これらが連携し、観察、フィードバック、適応、学習のサイクルを回します。例えば、無線エンジニアがトラブル対応の手順を普通の言葉で説明するだけで、AIがそれを再利用可能な自動対応プログラムに変換します。エンジニアはプログラミングを学ぶ必要はありません。専門知識をAIが強化してくれるのです。SMO(サービス管理・調整システム)は「ネットワーク版Netflix」とも言えます。かつて新しいサービスを立ち上げるには、巨額の投資と長期の計画が必要でした。しかし今では、開発者が小さなアイデアを即座に投入し、成功すれば一気に拡大できる。失敗してもすぐに切り替えられる。それがオープンエコシステムの力です。

最大の課題は「文化」
技術的な実現は比較的簡単です。難しいのは組織文化の変革です。自律化には次の変化が必要です。命令と管理から協力と信頼へ。システムが人の承認なしに判断することを受け入れる。スピードと責任のバランスを取る新しいルール。全エンジニアのAI教育。業界には「新技術を追いかけるだけで、実現しない」という悪い習慣があります。これを変えなければ、自律化は資料の中だけの話で終わってしまいます。

楽天シンフォニーの取り組み
楽天シンフォニーは最初から自律化を見据えてネットワークを設計しました。後付けではなく、設計の中核として組み込んだのです。もはや、10年かけて標準を待つ時代ではありません。APIの公開やマーケットプレイスでの協働が、新たな標準化の形なのです。オープンであることがスピードそのものであり、イノベーションの原動力になります。

3つの重要ポイント
人、プロセス、ツールの順で考える。技術があっても、日常業務に組み込まなければ機能しません。オープンであること。標準化を何年も待つのではなく、API公開やエコシステム参加で素早く進化します。意味のある評価指標。「自動化が価値を生むまでの時間」「再利用性」「信頼性」を測定します。自律化はコスト削減だけが目的ではありません。顧客が求めるカスタマイズされたサービスを、リアルタイムで提供できる唯一の方法なのです。

まとめ
自動化は予測できる問題を解決します。自律化は予測できない問題にも対応できます。これからの通信業界で成功するのは、作業手順の自動化を喜んでいる企業ではありません。眠らず、部門間の壁がなく、人の承認を待たずに正しい判断をするネットワークを構築している企業です。

私見と考察:自律化は信頼のテクノロジー

この話は単なる技術の話ではなく、通信業界の根本的な考え方の変化を語っていると思います。ポイントは、AIに仕事を任せるというより、AIと共に考える時代に入ったということです。私はこれを信頼のテクノロジーへの進化だと感じました。かつての自動化は、間違いなく業界を前進させました。作業を速く、正確に、省力化するという点では大成功です。しかし、どれだけ自動化しても、想定外の出来事が起きれば止まってしまう。夜中にワークフローが止まり、エンジニアが駆けつける。そんな光景はいまだに珍しくありません。自動化は決められたことをこなすまでが限界だったのです。一方で自律化は、なぜそうすべきかを理解し、自ら最適な判断を下す世界です。たとえば、RFエンジニアが自然な言葉でトラブルの説明をすると、AIがそれを学び、再利用できる知識として蓄積していく。人間の経験が、AIを通じてネットワーク全体の知恵へと変わるわけです。それは現場の知識がデジタルの集合知に進化するような感覚です。

そして何より重要なのが、信頼。AIが夜中に1,000のパラメータを変えても、なぜ、どうして、元に戻せるのか、がわからなければ、誰も安心して任せられません。だからこそ、透明性や説明可能性、可逆性が欠かせない。AIが自律的に動くためには、技術力以上に人間がAIを信じる文化が必要なのです。実は技術の進化よりも難しいのが、この文化の変革です。AIが判断しても、人間がそれでいいと思える体制をつくる。承認フローを減らし、スピードと説明責任のバランスを取る。そして、エンジニア自身がAIを理解するリテラシーを身につける。こうした変化こそが、本当の意味での自律化だと思います。自律化が目指すのは「部門間の壁がなく、人の承認を待たずに正しい判断をするネットワーク」ですが、そのためには、組織が「AIによる自律的な判断ミス」を許容し、それを成長の糧とするという、根本的なリスク観の転換が必要となります。

興味深いのは、楽天シンフォニーがこの考え方を後付けではなく、最初からの設計思想として持っている点です。クラウドネイティブでオープンなアーキテクチャを前提にしていたからこそ、自律化は自然な流れとして実現します。「人・プロセス・ツール」の順で考えるという姿勢も印象的です。どれだけ優れた技術があっても、文化や仕組みが変わらなければ意味がない。人を中心に据えたアプローチが、真の自律化を支えているのだと感じます。自動化は予測できることを解決し、自律化は予測できないことを乗り越えていく。AIが人間を置き換えるのではなく、人間がAIを信頼して共に未来を築く。それが、これからの通信業界に求められる姿勢なのではないでしょうか。自律化とはAIの革命ではなく信頼の革命なのです。

From automation to autonomy: Telecom’s big leap  
https://symphony.rakuten.com/blog/from-automation-to-autonomy-telecoms-big-leap

From automation to autonomy in telecom networksAutomation handles the predictable. Autonomy tackles the unpredictable. Explore why trust, openness, and new KPIs make autonomy the telco future.symphony.rakuten.com