楽天シンフォニーが示す、中南米の通信の自動化と運用戦略

中南米の通信市場では、Telefónicaによる相次ぐ事業売却やMillicomの事業拡大によって、通信事業者の勢力図が変わりつつあります。同時に、5Gの普及や将来の6Gを見据えた投資も続くなか、複雑化するネットワークを持続可能なコストで運用できるかが大きな課題になっています。2026年3月2日から5日までスペイン・バルセロナのFira Gran Viaで開催されたMWC Barcelona 2026で、Sunset Technology創業者兼CEOのGustavo Guaspari氏と、楽天シンフォニーのSVP兼戦略的成長部門グローバル責任者であるVivek Chadha氏が、中南米の通信市場について対話しました。2分強の短い対話ですが、そこには中南米の通信事業者が直面している市場再編、コスト削減、ネットワーク自動化、AI、5G・6G、地域パートナーの役割という複数の論点が凝縮されています。

https://youtu.be/g34WWFUg6T0

中南米で重要性を増す楽天シンフォニーとSunset Technologyの協業
Sunset Technologyは、楽天シンフォニーの中南米地域におけるパートナーです。グローバルに開発された通信技術を中南米へ展開するには、各国の既存設備、規制、競争環境、利用者の料金水準などを理解し、それぞれの市場に合わせる必要があります。対話では両社の具体的な役割分担までは説明されていません。ただし、楽天シンフォニーがクラウドネイティブな通信基盤や自動化技術を提供し、Sunset Technologyが地域市場との接点を担うことで、各国の実情に応じた導入を進めやすくなると考えられます。

通信業界の再編がネットワーク変革を促している
Guaspari氏は、中南米の通信市場を「非常に複雑な状況」と表現しています。その背景として挙げたのが、Telefónicaによる事業売却と、Millicomの南米での存在感拡大です。Telefónicaは2025年にアルゼンチン、ペルー、ウルグアイ、エクアドルの事業売却を完了し、2026年第1四半期にはコロンビアとチリからも撤退しました。一方、Millicomは買収を通じて南米での事業基盤を拡大しています。なお、動画における「Telefónicaは全ての事業を売却した」という発言は、ブラジルを含む中南米全域からの完全撤退ではなく、スペイン語圏で進む大規模な事業売却の流れを簡潔に表現したものと捉えるのが適切です。こうした市場再編は、通信事業者の名前やシェアが変わるだけでは終わりません。買収したネットワークには、異なる世代の設備、複数ベンダーの機器、別々に構築された運用システムや業務プロセスが混在している場合があります。事業規模が拡大しても、運用が複雑になりすぎれば、統合効果を十分に得られません。そのため、市場再編が進む時期ほど、ネットワーク運用の標準化と自動化が重要になります。複数の設備やシステムを横断して制御できる共通基盤がなければ、障害対応、設定変更、サービス開通、設備増強などの業務が人手に依存し続けるからです。

最大の課題は自動化とコスト削減
Guaspari氏は、中南米の通信事業者に共通する最大の課題として「自動化」と「コスト削減」を挙げています。一見すると従来から繰り返されてきたテーマですが、現在の自動化は、単純な定型作業の置き換えだけを意味していません。従来の通信ネットワークでは、機器ごとに専用の管理画面や手順があり、設定変更や障害対応を人間が個別に行う場面が少なくありませんでした。作業の一部をスクリプトやRPAで自動化しても、その前後で人間による確認やシステム間の情報転記が必要であれば、ネットワーク全体の運用コストは大きく下がりません。楽天シンフォニーとSunset Technologyが目指しているのは、クラウドネイティブなネットワークと高度なオーケストレーションを組み合わせた、より広い範囲の自動化です。オーケストレーションとは、個々の作業を自動化するだけでなく、複数のシステムやネットワーク機能を連携させ、一連の業務をまとめて制御する仕組みです。たとえば、新しい通信サービスを提供する際、ネットワーク機能の準備、設定変更、接続試験、品質監視までを共通のワークフローとして管理できれば、人間が複数のシステムを行き来する作業を減らせます。障害対応においても、異常の検知から関連データの収集、原因の絞り込み、対処までを連携させることで、復旧時間の短縮が期待できます。自動化の目的は、単純に人員を減らすことではありません。人間が繰り返していた作業をシステムへ移し、少ない負担で大規模なネットワークを運用できる構造へ変えることにあります。これによって運用コストを抑えながら、設定ミスの削減、障害対応の迅速化、サービス提供までの期間短縮を同時に目指せます。

Sunset Technologyが目指す継続的なサービス改善
Guaspari氏は、Sunset Technologyの将来像について、自動化、コスト削減、サービス提供の継続的改善を通じて価値を提供する企業になりたいと説明しています。注目したいのは、自動化とコスト削減だけでなく「継続的改善」が含まれている点です。通信ネットワークでは、一度システムを導入しても、利用状況、トラフィック、設備構成、障害傾向は変化し続けます。最初に設定した自動化ルールを長期間そのまま使うだけでは、環境の変化に対応できません。運用データを蓄積し、どの工程に時間がかかっているのか、どの障害が繰り返されているのか、どの設備が過剰または不足しているのかを分析しながら、業務プロセスを改善し続ける必要があります。自動化は完成品ではなく、運用を通じて育てる仕組みです。この点で、地域の通信事業者と長期的に関係を築くパートナーの存在が重要になります。導入時だけ支援するのではなく、稼働後のデータを確認しながらワークフローや設定を改善し、より多くの業務を自動化していくことが求められるからです。Guaspari氏は、楽天の技術だけでなく、企業文化や仕事の進め方も評価しています。両社の協業が単なる製品販売ではなく、継続的な関係を前提としていることがうかがえます。

5G・6G時代にはAIを運用部門へ組み込む
Guaspari氏は、5Gの進化と将来の6Gを見据え、AIを運用部門へ導入し、コスト削減につなげる必要があると述べています。5G・6Gでは、管理する設備やデータ、設定項目が増え、ネットワークの構成や運用がさらに複雑になると考えられます。AIの具体的な活用先としては、トラフィック需要の予測、設備負荷の分析、障害の予兆検知、原因の推定、電力消費の最適化などが挙げられます。

AIとオーケストレーション基盤を連携させれば、異常を検知して人間へ通知するだけでなく、関連データの収集や原因の絞り込み、あらかじめ定められた範囲での設定変更や復旧処理までを一連の流れとして実行できるようになります。重要なのは、AIをネットワークの外側にある分析ツールとして使うだけでなく、日常的な運用プロセスの中へ組み込むことです。ただし、AIへ全ての判断と実行を任せればよいわけではありません。どこまでを自動実行し、どの変更に人間の承認を求めるのか、想定外の動作が起きた場合にどのように停止し、元の状態へ戻すのかを事前に設計する必要があります。AI、オーケストレーション、監視、ガバナンスを一体として構築することが、コスト削減と安全な運用を両立させる条件になります。

私見と考察:6Gへの準備は運用モデルの改革から始まる

6Gへの準備というと、新しい周波数や無線設備、通信速度、低遅延といった技術に注目が集まりがちです。しかし、今回の対話で繰り返し語られているのは、将来の通信技術そのものよりも、それを持続可能なコストで運用するための仕組みです。通信ネットワークには、基地局の増設、ソフトウェア更新、セキュリティ対策、データセンターやエッジ設備の維持など、継続的な支出が必要です。既存ネットワークの運用に多くの人員と費用を使い続ければ、5G Advancedや6G、新しいサービスへ振り向けられる資金と人材は限られます。反対に、自動化によって日常的な運用コストを抑えられれば、設備の高度化、カバレッジ改善、サービス開発などへ投資できる余地が生まれます。その意味で、自動化は「現在のネットワークを安く維持する技術」だけではありません。通信事業者が次の世代へ移行するための資金と人材を生み出す経営基盤でもあります。新しい通信技術を導入するたびに専用システムと手作業が増える構造を残したままでは、5Gや6Gの能力を持続可能な事業へ結びつけることは困難です。6Gへの移行に向けて必要なのは、新しい無線設備を検討することだけではありません。クラウドネイティブ化、データの統合、業務プロセスの標準化、自動化、AI活用を進め、ネットワークの複雑性を運用基盤の側で吸収できる構造へ変えることも重要です。次世代ネットワークへの準備では、設備の更新と並行して、運用モデルの改革を進める必要があると考えられます。

中南米で問われるのは新技術の導入速度より運用の持続可能性
中南米の通信市場では事業者の再編が進み、5Gの普及や将来の6Gを見据えた投資も続いています。問われているのは、新しい設備をどれだけ早く導入するかだけではありません。複雑化するネットワークを持続可能なコストで運用し、市場や利用状況の変化に合わせて改善し続けられるかが重要になっています。楽天シンフォニーのクラウドネイティブ、自動化、AIに関する技術と、Sunset Technologyが持つ中南米市場への理解を組み合わせる点に、両社の協業の意義があります。5G・6G時代の競争力を左右するのは、最新設備を所有しているかどうかだけではなく、それを少ない負担で運用し、継続的に改善できる仕組みを構築できるかどうかなのです。




Three takeaways: Strategies for Latin American networks with Sunset Technologies

https://symphony.rakuten.com/blog/three-takeaways-strategies-for-latin-american-networks-with-sunset-technologies

Three takeaways: Strategies for Latin American networks with Sunset Technologies and Rakuten SymphonyTo share his vision for telecoms in Latin America, Gustavo Guaspari, Founder and CEO of Sunset Technology, spoke with Vivek Chadha, SVP, Global Head of Strategic Growth at Rakuten …リンク