映画評「トリック大作戦」(1991年/香港)

1991年/香港/94分 監督・脚本:バリー・ウォン 出演:チャウ・シンチー/アンディ・ラウ/ン・マンタ/ロザマンド・クワン/チンミー・ヤウ

私は子供のころから香港映画が好きだった。それから大して成熟しているわけではないので今でも大好きだ。心と体が疲れると、チャウ・シンチーに浸っていたくなる。温泉のような不思議な薬効があるのだ。この映画のシンチー成分は良質だ。監督と脚本は、王晶(バリー・ウォン)。コッテコッテの香港映画を作ることにかけては一流の腕前だ。その前のゴッド・ギャンブラー2でアンディ・ラウ、チャウ・シンチー、 ン・マンタという豪華キャストで作った経験も生かされているのだろう。非常にチームワークよく、シンチーの性質を生かした、まとまりのある映画となっている。アンディ・ラウの存在も大きい。「欲望の翼」や「インファナル・アフェア」などシリアスな映画でも有名だが、こういった喜劇にたくさん出ている。エレベーターの壁に顔面を押しつけられたり、なかなかいい動きだ。くだらないギャグに対抗できるハンサムな彼がいてこそ、全ての演技が引き立つというものだ。シンチーとの相性も抜群だ。冒頭から意表を突く展開。何度も見ているのに同じ場面で笑ってしまう。脇をかきながら「パパ!パパ!」と叫ぶ、親子の対面は爆笑ものだ。親子でエアロビも、変態的な動きだ。突然、家庭内京劇が行われても、なぜか自然だ。ン・マンタとは本当の親子なんじゃないかと勘違いしてしまうくらいの息の合ったコンビだ。物語の設定がしっかりしているので、2012年の今見ても、十分楽しい。詐欺師のシンチーが偽の兄弟としてアンディの家にやってくる。アンディはだまされる側だ。シンチーも家族同様に過ごしていくうちに、アンディに情がうつってくる。その展開が面白い。ケーキをほおばるシーンに熱い共感と感動がある。社長令嬢とアンディの恋愛物語も入りこんで、なかなかスリリングだ。後半になって突如、トリック大王がライバルとして出現する。クライマックスに向けての明確な盛りあがりがある。ガラスに吹きかけた「I LOVE YOU」の文字に感動がある。ラストの秘密兵器で戦うシーンが最高だ。シンチーはその出来に不満らしいが、私は脳内が爆発するほどの快感を覚えた。ドラえもんの秘密道具のような物がいきなり出現して、敵をやっつける。こんなくだらない展開をよくも思いつけるものだ。