楽天モバイルとCapeが日米軍事共同演習でOpen RANネットワークの有効性を実証

2026年2月25日、通信業界と防衛関係者の双方に大きな衝撃を与えるニュースが発表されました。楽天モバイル株式会社と、米国のモバイルテクノロジー企業「Cape」が、日米軍事共同演習において商用モバイル通信接続の有効性を共同で実証したことを明らかにしたのです。
「安さ」や「楽天ポイントとの連携」というイメージが根強かった楽天モバイルですが、今回の発表はその印象を大きく塗り替えるものとなりました。国家安全保障を支える高度な通信インフラ企業として、同社が新たなステージへと踏み出したことを強く印象づける出来事といえるでしょう。

演習の概要:何が行われたのか
今回の実証は、在日米軍と日本の自衛隊が隔年で実施している多国間軍事共同演習の場で行われました。演習は2026年1月下旬から2月上旬にかけて、日本国内の複数の米軍施設において、自衛隊と密接に連携しながら実施されました。この演習の主な目的は、日米間における相互運用性と即応性の強化にあります。
その演習の中で今回初めて採用されたのが、楽天モバイルが提供する「Open RAN対応の完全仮想化クラウドネイティブモバイルネットワーク」、すなわちOpen RAN完全仮想化ネットワークです。このネットワークを介して、Cape社のモバイルコアネットワークに接続し、多国間での共同通信や指揮決定の遂行といった幅広い運用目的を達成しました。
これまでの多国間軍事演習では、汎用低軌道衛星(pLEO)システムが通信の主軸を担うことが一般的でした。しかし今回の実証によって、商用モバイル通信ネットワークによっても、同盟国間において指揮レベルから現場運用レベルまで、強固な通信エリア・高速性・高い使いやすさを実現できることが示されました。

楽天モバイルの役割:世界初の技術が軍事演習を支える
楽天モバイルは今回、実証に必要なOpen RAN要素の展開と管理を含む、基盤となるネットワークインフラ全体を提供しました。同社が選定された背景には、世界初の大規模商用Open RAN完全仮想化ネットワークを実現したパイオニアとしての実績があります(2019年10月1日時点、ステラアソシエ調べ)。
楽天モバイルのOpen RANネットワークが持つ最大の特徴は、優れた俊敏性と費用対効果、そして高度な仮想化技術にあります。ハードウェアに縛られた従来の通信設備とは異なり、ソフトウェアで制御されるクラウドネイティブなアーキテクチャーは、変化が激しく高い要件が求められる通信環境、まさに軍事演習のような状況、において独自の強みを発揮します。
同社の共同CEOである鈴木和洋氏は、今回の連携について「Capeはセキュアなモバイル通信サービスをけん引している企業であり、このプロジェクトは、当社のクラウドネイティブネットワークアーキテクチャーと先進的なOpen RAN機能が、実際の厳しい環境下で実用的に応用可能であることを実証する、貴重な機会となりました」と述べています。

Cape社の役割:プライバシー重視のモバイルコアが最前線へ
一方のCapeは、「プライバシー重視」を掲げるモバイルテクノロジー企業です。
https://www.cape.co/
(英語のみ)
一般向けのモバイル通信を政府・軍事レベルの任務にも耐えうる水準へと引き上げることを得意としており、政府・企業・一般消費者向けに端末とモバイルネットワークの製品・サービスを提供しています。
同社はこれまでに、著名なベンチャーキャピタルであるAndreessen HororizやPoint72 Venturesをはじめ、複数の投資家から総額9,100万ドルの資金調達を実施しています。また、研究パートナーとして米空軍研究所(Air Force Research Laboratory)やメリーランド大学といった主要なサイバーセキュリティ研究機関が名を連ねており、その技術的信頼性の高さが裏付けられています。
今回の演習においてCapeは、楽天モバイルのOpen RANハードウェア基盤と自社のソフトウェア定義による機能を統合し、高負荷な通信環境下での接続における信頼性・スループット・速度を検証しました。さらに、同社が持つ高度なセキュリティ・プライバシー・レジリエンス機能を組み合わせることで、厳しい運用環境下でも強靭かつ安全性の高い通信接続が実現可能であることを示しました。
CapeのCEOであるジョン・ドイル氏は「楽天モバイルのOpen RANインフラは、日本全国の顧客が必要とするカバレッジの提供において極めて重要な役割を担っており、今回の素晴らしいパートナーシップをさらに発展させていきたい」とコメントしています。

なぜOpen RANがセキュリティに強いのか
今回の実証において中心的な役割を果たしたOpen RANですが、なぜこの技術が軍事レベルのセキュリティ要件を満たすことができるのでしょうか。その理由は、従来の通信ネットワークの構造的な課題を根本から解決しているという点にあります。
従来の通信網は、エリクソンやファーウェイといった特定メーカーが製造した専用機器で構成されており、内部の仕様が外部からは確認できない、いわゆる「ブラックボックス」の状態にありました。不正なプログラム(バックドア)が仕込まれていないかどうかを、ユーザー側が独自に検証することは事実上不可能でした。
これに対してOpen RANは、通信機器の仕様をオープンにする、すなわち「ホワイトボックス化」することで、第三者の専門機関や政府機関による独立した監査を可能にします。「メーカーを信じるしかない」状態から「自分たちで安全を確認できる」状態へと転換したことが、軍事レベルの厳しい要求に応えられる最大の理由のひとつです。
また、ネットワーク全体がソフトウェアで構成される仮想化技術の恩恵として、新たなサイバー攻撃の脅威が発見された際にも、物理的な機器交換を伴わずにプログラムの書き換えだけで即座に全拠点のセキュリティを強化できるという機動性も備えています。さらに、特定の1社に依存しない複数ベンダーの組み合わせが可能なため、特定の国や企業の政治的影響を受けにくい「クリーンなネットワーク」を構築しやすいという側面もあります。

Capeの「プライバシー重視」技術の核心
Cape社の技術的な独自性は、通信キャリア自身でさえユーザーが誰でどこにいるか把握できないほどの徹底した秘匿性にあります。
通常、スマートフォンには世界に一つだけ割り当てられた識別番号(IMSIなど)があり、この番号を通じて個人の移動経路が追跡可能となります。Capeのシステムはこの番号を定期的に自動で書き換えることで、仮に通信が傍受されたとしても、同一人物の動きとして追跡することを極めて困難にします。
また、一般的な通信会社が通話記録や位置情報を長期間保管するのとは対照的に、Capeはこれらのデータを最小限の期間で完全消去する「データ最小化」の方針を徹底しています。さらに、通信の「脳」にあたるコアネットワークを自社で運用することにより、位置情報を盗み取ろうとするシグナリング攻撃をリアルタイムで検知・遮断する機能も備えています。
今回の実証では、楽天モバイルが「安全で透明な土台」としてのOpen RANインフラを提供し、その上でCapeが高度なプライバシー保護とセキュリティ機能を組み合わせるという、両社の強みが見事に補完し合う形が実現しました。

この実証が示す戦略的意味
今回の発表を、単に「楽天モバイルが防衛産業へ参入した」と捉えるのは早計かもしれません。しかし、その戦略的な意味合いは多岐にわたります。
まず、「軍事演習で採用された通信網」という実績は、高度なセキュリティを求める大手企業や政府機関にとって、これ以上ない信頼の証となります。次に、楽天グループが推進するOpen RANプラットフォームの海外展開においても、今回の実績は強力な後ろ盾になるでしょう。そして、特定の国やメーカーへの依存を排除するOpen RANの普及は、現在の日本が国家政策として推進する経済安全保障の方針とも合致しており、官民一体でのインフラ輸出の柱となる可能性も秘めています。

まとめ:通信の民主化の新たな地平
楽天モバイルが掲げてきた「携帯市場の民主化」というミッションは、もはや一般消費者のスマートフォンの世界だけにとどまりません。国家の安全を守る通信の最前線へと、その射程を大きく広げつつあります。
「楽天の電波はつながりにくい」と揶揄されていた時代から、世界で初めて大規模商用Open RAN完全仮想化ネットワークを実現し、日米軍事演習の通信基盤を担うまでに至った軌跡は、まさに技術革新の力を体現するものといえます。
今後、楽天モバイルがこの実績を武器に世界の通信市場においてどのような存在感を示していくのか、そしてCapeとのパートナーシップがどのように発展していくのか、引き続き注目が集まるところです。​​​​​​​​​


楽天モバイルとCape、日米軍事共同演習で モバイル通信接続の有効性を実証
– 多国間軍事演習でOpen RAN完全仮想化ネットワークにおけるセキュリティ、プライバシー、レジリエンス等の重要機能を検証 –
https://corp.mobile.rakuten.co.jp/news/press/2026/0225_01/

楽天モバイルとCape、日米軍事共同演習で モバイル通信接続の有効性を実証 | プレスリリース | 楽天モバイル株式会社 楽天モバイル株式会社(以下「楽天モバイル」)と、プライバシーを重視した安全で強靭かつ即応性の高い商用モバイル通信技術をけん引する Cape(以下「Cape」)は、日米軍事共同演習(以下「本演習」)で、多国間の指揮・統制・通信を支えるモバイル通信接続の有効性実証において両社が果たした重要な役割を発表しました。corp.mobile.rakuten.co.jp