
光でがんに挑む楽天メディカルという会社
楽天メディカルは、「アルミノックスプラットフォーム」と呼ぶ独自の技術基盤をもとに、がんをはじめとするさまざまな疾患に対する新しい治療法の開発・販売を手がけるグローバルバイオテクノロジー企業です。本社は米国カリフォルニア州サンディエゴに置き、日本・台湾・スイス・インドを含む世界5カ国に拠点を展開しています。
光と薬剤を組み合わせた、まったく新しいアプローチ
同社の治療法の核心にあるのは、「薬剤の投与」と「光の照射」という2段階のプロセスです。まず、光に反応する物質(光感受性物質)と、特定の細胞に選択的に集まる成分(キャリア)を組み合わせた薬剤を体内に投与します。その薬剤が標的となるがん細胞に集積したのち、特定の波長のレーザ光を照射することで光感受性物質が活性化し、がん細胞の細胞膜を傷害して選択的に壊死させます。周囲の正常組織への影響を最小限に抑えながら、がん細胞をピンポイントで攻撃できるという点が、従来の治療法との大きな違いです。この技術基盤は、米国国立がん研究所の小林久隆氏らが開発したがん光免疫療法をもとに構築されており、医薬品・医療機器・医療技術をひとつのシステムとして統合した包括的なプラットフォームとなっています。
世界に先駆けて日本での承認を実現、1,200件超の治療実績へ
同プラットフォームをもとに開発された最初の医薬品がASP-1929(国内製品名:アキャルックス®点滴静注250mg)です。この薬剤は、抗EGFR抗体セツキシマブに光感受性色素を結合させた抗体-光感受性物質複合体で、EGFRを発現するがん細胞に特異的に集積します。EGFRは頭頸部がん・肺がん・大腸がんなど多様な固形がんに発現することが知られており、将来的な適応拡大の可能性も期待されています。2020年9月、ASP-1929は「切除不能な局所進行又は局所再発の頭頸部癌」の治療薬として厚生労働省から製造販売承認を取得しました。これは世界で初めての承認です。その後、日本国内では180以上の病院に導入が進み、1,200件を超える治療実績が積み上げられています。高い完全奏効率(Complete Response Rate)が確認されているのみならず、患者のQOL(生活の質)向上にも寄与していることが現場からの報告として示されており、実臨床における同治療法の有用性を裏付けるデータとして広く注目されています。なお、米国ではFDAからファストトラック指定を受けており、同社は2028年の米国承認申請を目指して国際共同第Ⅲ相試験を推進中です。
光免疫療法の鍵を握る物質「IR700」、研究者へ無償開放
アルミノックスプラットフォームの中核を担う光感受性物質が、「IRDye® 700DX NHSエステル」(IR700)です。フタロシアニンを基本骨格とする色素で、親水性が高く毒性が低い上、波長690nmの光で活性化するという特性を持ちます。楽天メディカルはIR700を自社製造しており、複雑な構造と不安定な化合物であることから、合成から品質管理まで高度な技術を要しますが、独自の製造技術によってグローバルへの安定供給を実現しています。
2026年1月、同社はこのIR700について、アカデミア向けの学術研究目的に限り無償提供することを発表しました。あわせて、研究成果の発表条件と知的財産権に関するポリシーを大幅に緩和し、研究者が成果を事前に共有した上であれば自由に発表できるよう規定を改め、知財の取得・実施に関する条件も緩めることで研究者の裁量範囲を広げています。この決定の背景には、臨床実績をもつIR700を光免疫療法以外の幅広い治療モダリティにも応用してほしいという意図があります。IR700はすでに基礎研究から臨床試験まで世界中で活用されており、今回の開放措置によってその裾野がさらに広がることが期待されています。三木谷CEOはこの方針転換について、「IR700に関するより開かれた研究開発と知見の共有を支援し、治療技術のさらなる進展を後押しすることで、これまで以上に医療に貢献することを目指す」と述べています。

創業の原点は一人の父親のがん
楽天メディカルの誕生には、一つの個人的な経験が深く関わっています。2012年、楽天グループ創業者の三木谷浩史氏は、父・良一氏のすい臓がんを何とか治したいという思いから、世界中の論文を読み、名医と呼ばれる医師たちを訪ね歩きました。そうした中で出会ったのが、当時まだ開発の初期段階にあった光免疫療法でした。懐疑的な見方が多いなか、三木谷氏はその可能性を直感的に確信し、すぐさま個人的な支援を決めます。残念ながら父の治療には間に合いませんでしたが、「この最新治療をできる限り多くの人に届ける」という決意は揺らぎませんでした。三木谷氏はこれまでに約5億ドル(750億円以上)を私費でこのプロジェクトに投じており、その覚悟の深さは単なる事業投資の域を超えています。一方、未知の世界を探求し続ける研究者ミゲル・ガルシア・グズマン氏との出会いが、同社の研究を本格的に加速させることになりました。2010年に米国サンディエゴで創業(当時の社名はアスピリアン・セラピューティクス社)した同社は、治療法の研究開発から患者への提供まで一気通貫で担う総合バイオテクノロジー企業として成長してきました。
がん克服。を掲げ、グローバルな臨床開発を加速
現在、楽天メディカルは複数の国際共同第Ⅲ相試験を並行して推進しています。再発頭頸部扁平上皮がんを対象に、ASP-1929による光免疫療法と免疫チェックポイント阻害薬ペムブロリズマブとの併用療法を評価する試験(ASP-1929-381試験)では、米国・台湾・日本・ウクライナを含む30施設以上で患者登録が進んでおり、今後ポーランドでの開始も予定されています。また、現在承認されている頭頸部がんにとどまらず、子宮頸がん・肺がん・大腸がんなど、EGFRを発現するさまざまな固形がんへの応用拡大も視野に入れた研究が進んでいます。2026年5月29日から6月2日(米国時間)に米国イリノイ州シカゴで開催される米国臨床腫瘍学会(ASCO 2026)では、局所再発頭頸部扁平上皮がんを対象とした国際共同第Ⅲ相試験(ASP-1929-301試験)の結果が初めて公表される予定で、米国・台湾・日本・インド・ウクライナの40施設で実施されたこの大規模試験の成果は、世界の腫瘍学領域の専門家から大きな注目を集めています。副作用の軽減に向けた研究も着実に前進しています。2026年4月のAACR年次総会では、光免疫療法後に生じる浮腫がCOX-2の発現とプロスタグランジンE2(PGE2)の産生によって引き起こされる可能性を示す非臨床データが発表されました。COX阻害薬の予防的投与により浮腫が30〜50%軽減されることが確認されており、患者の身体的負担をさらに減らす手がかりとして期待されています。
国や経済状況を問わず、全ての患者に届けるために
がん克服。これが楽天メディカルのミッションを端的に表す言葉です。同社が目指すのは、単に有効な治療薬を開発することにとどまりません。国や貧富の差にかかわらず、より良いがん治療へのアクセスを可能にする医療エコシステムの構築こそが、同社の描く社会の姿です。がんを患う人、愛する人をがんで失う痛みを知っているからこそ、一日も早く、一人でも多くの患者に治療法を届けたい。その切実な願いが、750億円を超える私財投入という形でも示されており、楽天メディカルの研究開発と事業展開の全ての原動力となっています。
楽天メディカルについての三木谷氏のインタビュー記事です。
「金は天下の回りものだし、どう儲けるかと同じくらい、どう使うかが重要だと思っているんです。命に関わる事業はセンシティブですけど、少しでも助かる人が増えるなら、そこに使えばいいじゃないかと」
https://forbesjapan.com/articles/detail/96666
楽天メディカル
https://rakuten-med.com/jp/

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