楽天モバイルの「Mirai X-Gen」とは【前編】そもそも基地局とは vRANとOpen RANをやさしく解説

楽天モバイル、楽天シンフォニー、インテル、デル・テクノロジーズの担当者が、MWC 2026で次世代の基地局について議論しました。そこで紹介されたのが、新しい分散ユニット(DU)と「Mirai X-Gen」です。

楽天シンフォニーは、新しい構成によって基地局サイト当たりの設備投資を10~40%削減し、消費電力を前世代より35%抑えながら、5Gの処理容量を4倍にできると説明しています。さらに、小型サーバーを電柱や屋上へ取り付け、将来は通信以外のAI処理にも活用する構想が示されました。

ただし、基地局、DU、vRAN、Open RANといった言葉になじみがなければ、何が新しいのかを理解するのは簡単ではありません。全3回の前編では、Mirai X-Genの技術そのものへ入る前に、基地局の役割とvRANの基本を整理します。

まず押さえたいMirai X-Genの位置づけ

Mirai X-Genは、基地局のなかで通信データを処理するDUを、より小さく、効率的で、設置しやすいものへ進化させようとする取り組みです。

基地局というと、鉄塔やアンテナを新しくする話のように聞こえるかもしれません。しかし、今回大きく変わるのは、アンテナの奥で大量の通信を処理しているコンピューターの部分です。

楽天モバイルは、基地局の機能を専用装置へ固定するのではなく、ソフトウェアとサーバーを使って実現するネットワークを構築してきました。Mirai X-Genは、その仕組みを全国規模でより効率よく運用するための次の段階と位置付けられます。

そもそも基地局とは何か

基地局とは、スマートフォンと通信会社のネットワークを電波でつなぐ設備です。携帯電話回線を使って電話をかけたり、動画を見たり、メッセージを送ったりすると、データはまず近くの基地局へ届きます。

基地局は、受け取ったデータを通信会社のネットワークへ渡し、インターネットや通話相手の端末へ届けます。反対に、インターネットや相手の端末から届いたデータを電波へ変え、スマートフォンへ送り返す役割も担っています。

つまり基地局は、スマートフォンにとって通信ネットワークへの最初の入口です。通信会社がどれほど大規模なネットワークやデータセンターを持っていても、スマートフォンと基地局の間がつながらなければ利用できません。

基地局は鉄塔やアンテナだけではない

一般に「基地局」と聞くと、大きな鉄塔や、ビルの屋上に並ぶアンテナを思い浮かべるかもしれません。しかし、鉄塔やアンテナだけが基地局ではありません。

基地局は、電波を送受信するアンテナと無線装置、届いた信号を処理するコンピューター、通信会社のネットワークへ接続する光回線、これらを動かす電源設備などによって構成されています。

設置場所も鉄塔に限られません。ビルの屋上、電柱、建物の壁面、駅や商業施設の天井など、さまざまな場所に設置されています。広い地域を担当する大きな基地局もあれば、駅や店舗のような限られた範囲を担当する小さな基地局もあります。

移動中も通信が続く理由

スマートフォンと通信ネットワークは、電波の強さや品質などを確認しながら、利用する基地局を選びます。電車や自動車で移動すると、最初に接続していた基地局から次の基地局へ、接続先が順番に引き継がれます。

この切り替えは「ハンドオーバー」と呼ばれます。利用者が通常、その切り替えを意識することはありません。移動しながら通話や動画視聴を続けられるのは、複数の基地局が通信を受け渡しているためです。

基地局には、電波が届く範囲を広げるだけでなく、その場所にいる利用者の通信を処理する役割もあります。多くの人が一斉に接続すると、電波が表示されていても通信が遅くなることがあります。これは、基地局が処理できる通信量にも限りがあるためです。

都市部や駅周辺で基地局を数多く設置するのは、圏外を減らすためだけではありません。狭い範囲ごとに通信を分担させ、同時に処理できるデータ量を増やす目的もあります。

DUは基地局の「頭脳」

基地局の内部では、アンテナに近い無線装置がスマートフォンとの電波を送受信し、DUと呼ばれる装置が届いた信号を高速で処理します。たとえるなら、アンテナと無線装置が基地局の「耳と口」、DUが通信を瞬時にさばく「頭脳」です。

DUは、多数の利用者から届くデータを整理し、どの通信をどのタイミングで処理するかを制御します。電波の乱れによって生じたデータの誤りを補正するなど、安定した通信に欠かせない処理も行います。

5Gでは、多くの利用者が同時に大容量の通信を行います。さらに、Massive MIMOと呼ばれる技術では、多数のアンテナを使って複数の利用者へ効率よく電波を届けます。そのためDUには、非常に重い計算を、ほとんど遅れなく処理する能力が求められます。

今回のMirai X-Genで主に進化するのは、このDUの部分です。

専用装置の仕事をソフトウェアへ移すvRAN

スマートフォンと基地局を電波で結ぶネットワークの部分を、RAN(無線アクセスネットワーク)と呼びます。vRANの「v」は仮想化を意味します。

従来の基地局では、通信機器メーカーが開発した専用装置で信号を処理することが一般的でした。専用装置は必要な機能が一つの製品としてまとめられているため、性能や安定性を確保しやすいという利点があります。

一方で、機能の追加や性能の向上には、専用装置そのものの交換が必要になる場合があります。利用できる機器やソフトウェアも、特定メーカーの製品に左右されやすくなります。

これに対してvRANは、これまで専用装置が担っていた基地局機能をソフトウェアとして動かし、汎用的なサーバーを計算基盤として使う仕組みです。専用の箱に機能を固定するのではなく、パソコンへアプリを追加するように、ソフトウェアで機能を更新しやすくします。

ただし、家庭用パソコンを基地局へ置くわけではありません。通信向けに高い処理性能と信頼性を備えたサーバーを使い、基地局に必要な専用処理も組み合わせます。

Open RANとvRANの違い

Open RANとvRANは一緒に語られることが多いものの、同じ意味ではありません。

Open RANは、基地局を構成する機器同士の接続ルールをオープンにし、異なるメーカーの製品を組み合わせやすくする考え方です。これに対してvRANは、基地局の機能をソフトウェア化し、サーバー上で動かす方法を指します。

簡単にいえば、Open RANは「機器同士をつなぐルールを開くこと」、vRANは「専用装置の仕事をソフトウェアとサーバーで行うこと」です。

楽天モバイルは、この二つを組み合わせたネットワークを全国で運用しています。機器を柔軟に組み合わせ、機能をソフトウェアで更新できることが大きな特徴です。

柔軟なはずのvRANが複雑になっていた

vRANは柔軟な仕組みですが、5Gの重い信号処理をCPUだけで効率よくこなすことは簡単ではありませんでした。そのため従来は、サーバーへ追加のアクセラレーションカードを取り付け、CPUの処理を補助する構成が使われてきました。

追加カードを使えば、5Gに必要な高速処理を実現できます。しかし、部品、配線、制御用ソフトウェア、動作確認の項目が増えます。故障する可能性のある場所も増えるため、全国に多数の基地局を持つ通信事業者では、保守の負担が積み重なります。

楽天シンフォニーは、こうして生じる追加コストを「Complexity Tax」、直訳すれば「複雑さの税金」と表現しています。

Open RANやvRANが目指していたのは、基地局を柔軟で更新しやすいものにすることでした。それにもかかわらず、必要な性能を得るために部品や管理項目が増え、別の複雑さが生まれていたのです。

Mirai X-Genが向き合っているのは、まさにこの問題です。次回は、追加カードが担っていた機能を新しいCPUへどのように取り込み、10~40%の設備投資削減、35%の省電力、4倍の処理容量につなげたのかを見ていきます。

動画の説明:楽天、Dell、Intelのリーダー陣が、5Gを超え世代に依存しない新たなクラスの分散ユニット(DU)のローンチについて語ります。楽天モバイル向けに開発された「Dell PowerEdge XR9700 DU」は、3社が培った知見を結集し、現代のRANアーキテクチャを再定義します。この新たなDUを大規模展開することで、過酷なエッジ環境にクラウドRANとAIをもたらし、大幅な省エネルギーに加えて以下のメリットを提供します。

よりスマートなアーキテクチャ – 最高クラスのハードウェアを楽天モバイルのOpen RANエコシステムへシームレスに統合

設計レベルでの高い拡張性 – 複雑さを伴わずに迅速な拡張を可能にするクラウドネイティブな柔軟性

サステナビリティの追求 – 拠点(サイト)あたりの電力効率を劇的に向上

妥協のないパフォーマンス – 大容量化、低遅延化、そして将来の技術革新に対応する機能

From Complexity to Capacity: How Rakuten Mobile is Redefining the 5G vRAN Lifecycle

https://symphony.rakuten.com/blog/from-complexity-to-capacity-how-rakuten-mobile-is-redefining-the-5g-vran-lifecycle