楽天モバイルと楽天シンフォニー、世界初の「自律型ネットワーク レベル4」認定を取得:Open RANとAIでRAN消費電力を約20%削減

通信業界に新たな世界標準を打ち立てる歴史的マイルストーン
2026年2月、楽天モバイル株式会社と楽天シンフォニー株式会社は、通信業界において極めて重要な認定を取得したと発表しました。両社が共同開発したRAN(無線アクセスネットワーク)省電力化ソリューションが、国際的な業界団体であるTM Forum(TMF)から「自律型ネットワーク レベル4」として認定されたのです。
これは、商用Open RAN環境における「RAN Energy Efficiency Optimization」シナリオ(GB1059H)において、最小限の人的介入でインテント駆動型のクローズドループ自動化が実現可能であることが世界で初めて認定されたケースです。クラウドネイティブなOpen RANと高度なAI技術を組み合わせることで、顧客体験を損なうことなくRANの消費電力を従来比約20%削減するという成果が、業界全体から正式に評価されることとなりました。

「自律型ネットワーク レベル4」とは何か
TMFが定義する「自律型ネットワーク レベル4」とは、インテント駆動型で自律的に適応し、複数ドメイン環境にまたがって動作する高度な自律型ネットワークを指します。AIや機械学習を活用したクローズドループ管理によって運用され、人間が一つひとつ判断・指示を行う従来型の運用スタイルから、ネットワーク自身が「意図(インテント)」を理解し、自律的に最適化を行う運用スタイルへの移行を意味します。
簡単に言えば、ネットワークがまるで生き物のように状況を判断し、人間の関与を最小限に抑えながら自分自身を最適化し続ける、そのような高度な自律性が認められたということです。今日の通信網が担う役割の大きさを考えると、これは単なる技術的な成果にとどまらず、通信インフラ全体の運用哲学そのものを塗り替えるものと言えるでしょう。

ソリューションの仕組み:クラウドネイティブとAIの融合
今回の省電力化ソリューションの核心にあるのは、楽天シンフォニーが提供する先進的なOSS(運用サポートシステム)とAI搭載のオーケストレーション機能を統合したプラットフォームです。その中でも特に重要な役割を果たすのが、RIC(RAN Intelligent Controller)と呼ばれるAIによってRANを管理・制御する機能です。
楽天シンフォニーの執行役員兼ネットワーク運用システム(OSS)ビジネスユニットのプレジデントであるヴィヴェック・ムルシー氏は、このプラットフォームについて次のように説明しています。人間の関与なしに実装を完全自動化できる強力なRICを内包しており、AI/ML(機械学習)駆動型のRANアプリケーション(rApps)をシームレスに導入できる点が最大の特徴だと言います。これらのrAppsはKPI分析やパターン検出、将来のモバイル通信トラフィック予測などをリアルタイムに処理し、省電力化の判断を自律的に下します。
つまりこのシステムは、ネットワークの負荷状況を常時監視しながら、通信品質を維持できる範囲内で最適なタイミングに省電力モードへの切り替えや各種パラメータの調整を自動で実行します。従来であれば人間のエンジニアが経験と勘を頼りに行っていた判断を、AIが24時間365日途切れることなく代替する仕組みです。

楽天モバイルが描くビジョン:「持続可能で高品質な自律型ネットワーク」
楽天モバイルのAI&データ統括部ディレクターでチーフ・データ&AI・オフィサーを務めるサッチン・ヴァーマ氏は、今回の認定をRICプラットフォームを活用したAI駆動型イノベーションの証として位置づけています。同氏は、より持続可能で高品質な、顧客中心の自律型モバイルネットワークを提供していくという同社の姿勢を改めて強調しました。
また、ネットワーク運用統括部ディレクターのシェーレシュ・グプタ氏は、今回の認定がクラウドネイティブ・Open RAN・AI駆動という三つの柱によるモバイルネットワーク構築・運用ビジョンを体現するものだと述べています。同氏が特に強調したのは、サービス品質を犠牲にすることなく電力消費を削減できる完全自律型システムという点であり、これが楽天モバイル独自の取り組みであることを誇りをもって語りました。世界のモバイルネットワークをより持続可能で効率的にするという未来に向けて、通信分野の可能性を広げることへの貢献を確かな手応えとともに感じているようです。

業界団体TMFからの高い評価
TM ForumのメンバーおよびプロダクトEVPを務めるアンディ・テイラー氏も今回の成果を高く評価しています。同氏は、高度な自律性を活用して消費電力の最適化を図ることで、持続可能性とビジネス価値の両立が可能であることを示す大きな意義があると述べました。さらに、共通の枠組みや標準に基づいて業界がレベル4の自律化へと着実に前進していることを定量的に確認できる好例として、今回の取り組みを歓迎しています。
TMFというグローバルな業界団体からのこの評価は、楽天モバイルと楽天シンフォニーの取り組みが、日本国内だけでなく世界の通信業界における先進事例として認知されたことを意味します。

エネルギー問題と通信インフラ:なぜ今、省電力化が重要なのか
現代のモバイル通信ネットワークは、スマートフォンの普及やデータトラフィックの爆発的増加に伴い、消費するエネルギーが年々増大しています。特にRAN(無線アクセスネットワーク)は、通信事業者全体のエネルギー消費の大部分を占めるとされており、持続可能な通信インフラを実現するうえで省電力化は避けて通れない課題となっています。
こうした背景の中で、楽天モバイルが実証した「顧客体験を維持しながら消費電力を約20%削減する」というアプローチは、通信事業者にとって非常に現実的かつ実践的な解答です。従来のようにネットワーク性能を落として省電力を達成するのではなく、AIによる動的な最適化によって両立を実現している点が画期的と言えます。

両社が目指す「自律運用型通信インフラの世界標準」
楽天モバイルと楽天シンフォニーは、今回のTMFによる認定を通じて、完全自律型のネットワークにおいてクローズドループシステムが有効に機能することを実証しました。これにより、より持続可能な未来に向けた自律運用型の通信インフラと運用面における卓越性の新たな世界標準確立を目指すとしています。
楽天シンフォニーは日本に本社を置きながら、米国、シンガポール、インド、韓国、欧州、中近東アフリカ地域にも拠点を展開するグローバル企業です。楽天モバイルが世界でも先進的に商用利用を実現した大規模な仮想化Open RANネットワーク構築の知見を活かし、通信事業者向けに次世代ネットワークの計画・構築・運用に必要なすべての機能を提供しています。

まとめ
今回の「自律型ネットワーク レベル4」認定は、単なる技術的な受賞にとどまりません。それは、AIとOpen RANを組み合わせることで通信ネットワークの運用そのものを根本から変革できるという可能性を、世界規模で証明した出来事です。消費電力の約20%削減という具体的な数字は、環境負荷の低減という観点でも、運用コスト削減という経済的観点でも、通信業界全体にとって非常に大きな意義を持ちます。
楽天モバイルと楽天シンフォニーのこの取り組みが、日本発の通信技術革新として世界にどのような影響を与えていくのか、今後の展開に注目が集まります。​​​​​​​​​

Open RANとは何か:次世代モバイルネットワークの「開放革命」をわかりやすく解説

はじめに:そもそもRANって何?
Open RANを理解するためには、まず「RAN」そのものについて知っておく必要があります。RANとは「Radio Access Network(無線アクセスネットワーク)」の略で、私たちのスマートフォンと通信事業者のコアネットワーク(通信の中枢部分)をつなぐ「橋渡し役」のことです。街中や建物の屋上に設置されている基地局アンテナが、まさにRANの代表的な構成要素です。スマートフォンから発信された電波は、まずこの基地局(RAN)に届き、そこからインターネットや電話網へとつながっていきます。私たちが日常的に「電波がつながる」と感じているとき、その裏側ではRANが黙々と働いているわけです。では、そのRANに「Open(オープン)」という言葉がつくと、何が変わるのでしょうか。

従来のRANが抱えていた「閉鎖性」という問題
従来の通信ネットワークでは、基地局を構成するハードウェアとソフトウェアは特定の大手ベンダー(エリクソン、ノキア、ファーウェイなど)によって一体的に開発・提供されていました。つまり、あるベンダーのハードウェアを導入したら、そのソフトウェアも同じベンダーのものしか使えない、いわゆる「ベンダーロックイン」の状態が当たり前だったのです。この状態には、いくつかの大きな問題がありました。まず、通信事業者にとってコストが非常に高くつきました。競争が限られているため、ベンダーは強い価格交渉力を持ち、機器の導入費用も保守費用も高止まりしやすい構造でした。次に、柔軟性に欠けていました。新しい技術を取り入れたい場合や、ネットワークを拡張したい場合でも、同じベンダーのエコシステムの中でしか動けないため、スピード感のある対応が難しい状況でした。さらに、特定のベンダーへの依存という地政学的・安全保障上のリスクも指摘されるようになりました。特定の国や企業に通信インフラの根幹を握られることへの懸念は、近年ますます高まっています。こうした問題を根本から解決しようとする動きから生まれたのが、「Open RAN」という考え方です。

Open RANの核心:「オープン化」と「分解」
Open RANの基本的な考え方は、従来は一体化していたRANの構成要素を機能ごとに分解し、それぞれの間をオープンな標準インターフェースでつなぐことです。従来の基地局は大きく分けて、電波を送受信する「RU(Radio Unit)」、信号処理の一部を担う「DU(Distributed Unit)」、より高度な信号処理とネットワーク制御を担う「CU(Centralized Unit)」という三つの機能から構成されています。従来型ではこれらを同一ベンダーが一体的に提供していましたが、Open RANではこれらを独立したコンポーネントとして扱い、異なるベンダーの製品を組み合わせて使えるようにします。たとえるなら、パソコンのような存在です。パソコンはCPUをインテル製にしながら、メモリは別メーカー、ストレージはまた別のメーカーというように、異なるメーカーの部品を組み合わせて一台のコンピューターとして機能させることができます。Open RANは、通信基地局においてこれと同じことを実現しようとしているわけです。この「分解(disaggregation)」と「オープンな標準インターフェース」こそが、Open RANの最大の特徴です。

Open RANを支える「O-RAN Alliance」
Open RANの標準化を主導しているのが「O-RAN Alliance(オーランアライアンス)」という国際的な業界団体です。NTTドコモやAT&T、ドイツテレコムといった世界の主要通信事業者が中心となって2018年に設立されました。O-RAN Allianceは、Open RANを構成する各コンポーネント間の通信仕様や、AIを活用したネットワーク制御の仕組みなどを細かく標準化しています。この標準に準拠していれば、世界中のさまざまなベンダーが開発した製品が互いに連携できるようになります。特に重要なのが、「RIC(RAN Intelligent Controller)」という概念です。これはAIや機械学習を使ってRANをリアルタイムに制御・最適化するためのプラットフォームで、楽天モバイルのRAN省電力化ソリューションにおいても中核的な役割を果たしています。RICがあることで、ネットワークの状況を常時監視しながら、自動的に最適な設定へと調整することが可能になります。

Open RANがもたらす四つのメリット
Open RANが普及することで、通信業界には大きく四つの変化がもたらされると期待されています。

コスト削減と競争促進については、複数のベンダーが競争できる環境が生まれることで、機器の調達コストが下がります。通信事業者は最もコストパフォーマンスに優れた組み合わせを自由に選べるようになり、その恩恵は最終的には利用者にも還元される可能性があります。

イノベーションの加速という点では、ソフトウェアとハードウェアが分離されることで、ソフトウェアのアップデートや新機能の追加がより迅速かつ柔軟に行えるようになります。特定ベンダーの開発スケジュールに縛られることなく、必要な機能を素早く展開できる環境が整います。

サステナビリティへの貢献として、AIと組み合わせることで、ネットワークの負荷に応じてリアルタイムに消費電力を最適化することが可能になります。楽天モバイルが実証した消費電力約20%削減は、Open RANとAIの組み合わせが省エネに直結することを示しています。

セキュリティと自律性の確保という観点では、特定ベンダーへの依存を低減することで、地政学的リスクを分散させることができます。各国が自国のセキュリティ基準に合ったベンダーの製品を組み合わせて使えるようになるため、通信インフラの自律性を高めることにもつながります。

クラウドネイティブとの融合:さらなる進化
Open RANの可能性をさらに広げているのが、「クラウドネイティブ」という概念との融合です。従来の通信機器は専用のハードウェアで動作することが前提でしたが、クラウドネイティブなOpen RANでは、汎用サーバー上でソフトウェアとして通信機能を動かすことができます。これにより、データセンターと同様にサーバーリソースを柔軟に増減させたり、ソフトウェアを素早くアップデートしたりすることが可能になります。楽天モバイルはこのアプローチを世界に先駆けて大規模な商用ネットワークに適用したパイオニアとして知られています。仮想化されたOpen RANを商用レベルで展開するという前人未踏の挑戦を実際にやり遂げたことで、その知見は楽天シンフォニーを通じて世界の通信事業者に提供されています。

Open RANの課題:普及に向けた壁
一方で、Open RANにはまだいくつかの課題も存在します。異なるベンダーのコンポーネントを組み合わせることで、それぞれの製品が本当に安定して連携動作するかどうかという「相互運用性」の検証には多大な時間と労力がかかります。また、一体型のシステムと比較して、問題が発生したときの障害切り分けが難しくなるという面もあります。さらに、既存の通信インフラを持つ大手通信事業者にとっては、従来型のシステムからOpen RANへの移行には相応の投資と時間が必要です。ゼロから構築した楽天モバイルのようなグリーンフィールド(新規参入)事業者と比べると、既存インフラを抱えるブラウンフィールド事業者には移行の難易度が高いという現実もあります。ただし、こうした課題は業界全体で取り組まれており、標準化や相互運用性テストの充実によって着実に解決が進んでいます。

Open RANは通信の「民主化」
Open RANは、長年にわたって少数の大手ベンダーが支配してきた通信インフラの世界に、「開放」と「競争」をもたらすムーブメントです。ハードウェアとソフトウェアを分離し、オープンな標準に基づいて誰もが参入できる環境を作ることで、コストの削減、イノベーションの加速、そして持続可能なネットワーク運用を同時に実現しようとしています。楽天モバイルが「携帯市場の民主化」をミッションに掲げているのは、こうした文脈と深く重なっています。世界初の大規模商用Open RANネットワークを構築・運用し、今回の「自律型ネットワーク レベル4」認定を取得したことは、Open RANという概念が理想論ではなく現実的な解として機能することを世界に証明した出来事でもあります。5Gから6Gへと通信技術が進化していく中で、Open RANはその基盤技術としてますます重要な役割を担っていくことでしょう。​​​​​​​​​​​​​​​​


楽天モバイルと楽天シンフォニー、商用Open RANネットワークにおけるRAN省電力化でTM Forumより世界初の「自律型ネットワーク レベル4」認定を取得
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楽天モバイルと楽天シンフォニー、商用Open RANネットワークにおけるRAN省電力化でTM Forumより世界初の「自律型ネットワーク レベル4」認定を取得 | 楽天グループ株式会社 楽天モバイル株式会社(以下「楽天モバイル」)と楽天シンフォニー株式会社(以下「楽天シンフォニー」)は、共同開発した楽天モバイルの自律型RAN(無線アクセスネットワーク)省電力化ソリューション(以下「RAN省電力化」)が、通信事業者やテクノロジー企業などが参画する国際的な業界団体であるTM Forum(以下「TMF」)より、「自律型ネットワーク レベル4」と…corp.rakuten.co.jp