
楽天グループ、MWC Barcelona 2026でIntelligent Growthビジョンを発信
世界最大規模の通信業界イベントであるMWC Barcelona 2026が今月開催され、楽天グループは「Intelligent Growth(インテリジェント・グロース)」をテーマに出展しました。オープンネットワークアーキテクチャ、収益多角化、AIが主導する新時代への適応という三つの柱を軸に、楽天グループは通信キャリアが今後どのように進化できるかという具体的なビジョンを世界に向けて発信しました。
楽天グループはこのイベントを通じて、ネットワークをソフトウェアとしてスケールさせる手法、AIを活用したネットワーク運用の自動化、そして単なる通信接続を超えた価値提供と収益モデルの再設計について、パートナー企業や業界関係者との活発な議論を展開しました。世界初となる認定取得や新たなパートナーシップの締結など、複数の重要な発表も相次ぎました。
三木谷浩史CEOがメインステージで「エコシステムモデル」の可能性を提示
楽天グループの代表取締役会長兼社長である三木谷浩史氏は、MWC 2026のメインステージに登壇し、通信事業者が既存の強みと資産を活用して新たなデジタルエコシステムを構築するための楽天独自の設計図を紹介しました。
三木谷氏は、「通信業界が単なるネットワーク接続の提供から、より豊かな消費者向けサービスの提供へと変革を遂げるべき時が来ていると、私は強く信じています。ポイントプログラムを通じて通信サービスを豊かなエコシステムへと転換できれば、それはビジネスにとって非常に大きなプラスになるでしょう」と述べました。
また、楽天モバイルのチーフデータ・AIオフィサーであるSachin Verma氏、楽天シンフォニーのグローバルサービスデリバリー担当SVPのSubha Shrinivasan氏、ソリューションアーキテクチャ担当SVPのDevesh Gautam氏、グローバルプロダクトセキュリティ責任者のNagendra Bykampadi氏ら楽天グループの幹部も、デジタルツイン、エネルギーと鉄塔の効率化、5Gの未来といったテーマでGSMAステージに登壇しました。
楽天ブースシアターが業界リーダーを結集
イベントの3日間を通じて、楽天の顧客・パートナー企業、そして業界の有識者たちが楽天ブースのシアターで多彩な議論を展開しました。1&1 MobilfunkのCEOであるMichael Martin氏と楽天モバイルの共同CEOおよび楽天シンフォニー社長のSharad Sriwastawa氏が登壇したパネルディスカッションでは、GSMAインテリジェンスのPeter Jarich氏がモデレーターを務め、Open RANの未来と次世代モバイルネットワークの標準化における可能性について議論が交わされました。
Sriwastawa氏は、「通信事業者は複数のテクノロジーを導入しているにもかかわらず、ARPUは増加していません。コスト削減と収益増加の双方を実現する強いニーズがあります。それは必ずしも接続性を通じてではなく、他の手法によってもたらされる必要があります」と課題を提起しました。さらに氏は、持続可能な通信事業者、AIが主導する自律的な運用、非地上系ネットワーク、エコシステムとマネタイズを推進する通信事業者、ソフトウェア定義型ネットワーク、将来性のある安全で6G対応のネットワークという六つの構造的シフトを強調しました。
楽天インターナショナルのリーダーたちによるパネルディスカッションでは、楽天のエコシステムモデルがいかに世界各市場で成功裏に展開されてきたかが振り返られました。楽天インターナショナルCEO兼楽天リワードCEOのAmit Patel氏、楽天TV CEOおよびラクテン・フランス社長のCédric Dufour氏、楽天シンフォニーのチーフストラテジーオフィサーPuneet Handa氏が参加。Patel氏は、「すべてのサービスは、異なるサービス間でアイデンティティというコンセプトを活用するよう戦略的に追加されており、消費者が楽天を利用する強い理由を感じられるようになっています。これは非常にユニークで、これほど多岐にわたるカテゴリーにわたって多数の異なる体験を統合している企業は、世界に他にないと思います」と述べました。
楽天モバイルはAI活用においても業界をリードするオペレーターとしての地位を確立しており、すでにRANエネルギー20%削減、AIによる小売ロケーションインテリジェンス、品質保証、根本原因分析を実現しています。Sachin Verma氏、ネットワーク監視副ディレクターのMahmoud ElSakhawy氏、エンジニアリング・モバイルネットワーク&テクノロジー戦略担当VP Brijesh Yadav氏らが、AIを通じた自律型ネットワークと持続可能な接続の実現について議論しました。
MWCで相次いだ重要発表
楽天グループはMWC Barcelona 2026の会期中、複数の重要な発表を行いました。なお、イベント開幕に先立ち、楽天モバイルがTM ForumのLevel 4 RANエネルギー効率認定を取得した世界初のMNOとなったこと、および楽天モバイルが日本国内の商用モバイルネットワーク全域にわたるRICアプリケーションの展開を完了したことも発表されていました。
楽天クラウド、Google CloudのOEMパートナーに
楽天のクラウドネイティブストレージ製品が、Google Distributed Cloud Connectedサーバーに標準搭載されることが発表されました。このOEM契約により、Google Cloudが同サーバーの展開に楽天のクラウドネイティブストレージを組み込む形となり、顧客は事前検証・統合済みのコンピュートとストレージのスタック全体をGoogle Cloudからワンバンドルで購入できるようになります。
この連携によって、複雑な設計・展開サイクルが不要となり、エンタープライズ顧客は分散クラウド基盤をシームレスに導入できる環境が整います。楽天のソフトウェア定義ストレージが主要クラウドプロバイダのインフラに標準部品として組み込まれるという今回の合意は、楽天クラウド製品の市場評価が着実に高まっていることを示す一つの節目と言えます。
楽天シンフォニー、Beeline UzbekistanとMoU締結
バルセロナでは、楽天シンフォニー、VEON、そしてVEONのデジタルオペレーターであるBeeline Uzbekistanの三者が、Open RAN開発、AIを活用したネットワークインテリジェンス、次世代デジタルプラットフォームにおける協力関係を探ることを目的とした覚書(MoU)に署名しました。
この覚書は、クラウドソリューション、グローバルIoTおよびモバイルワーカー接続、eSIMと国際ローミングに関する協力検討の枠組みを定めるものです。今回の発表は、2023年に開始された楽天とVEONのパートナーシップを発展させるものであり、楽天はすでにウクライナのKyivstarおよびカザフスタンのBeeline Kazakhstanとのパートナーシップを展開しています。
SamsungおよびNokiaとの相互運用性検証が完了
楽天シンフォニーは、SamsungのクラウドネイティブvRAN(仮想RAN)およびvCore(仮想コア)が楽天クラウドネイティブプラットフォーム上で動作することの相互運用性テストに成功したことを発表しました。この検証では、双方のコードにまったく変更を加えることなく、ほぼ完全な相互運用性が実証されました。
この成果により、通信事業者はベストインクラスのマルチベンダー対応クラウドネイティブネットワーク機能を、長期の統合サイクルや独自エンジニアリングを必要とせずに迅速かつ確実に展開できることが示されました。
またNokiaとの協力においては、IP Multimedia SubsystemやSubscriber Data Management、Cloud Signaling Director、Mediation、NetGuard Certificate Managerを含むNokiaのクラウドネイティブネットワーク機能が、楽天クラウド上の楽天モバイルの商用環境でライブ稼働中であることが正式に確認されました。これにより、楽天クラウドが大規模かつ持続可能な5Gネットワーク向けのパートナーエコシステムとして成熟しつつあることが改めて示された形です。

私見と考察:Open RANの提供とエコシステムモデルの輸出
今回のMWC 2026における楽天グループの一連の発表は、同社が「通信事業者」という従来の枠組みにとどまらず、ソフトウェアとエコシステムの力でテレコム産業そのものを再定義しようとしている姿勢を明確に示すものでした。
特に注目されるのは、Google CloudのOEM契約です。単なる技術パートナーシップではなく、楽天のストレージソフトウェアがGoogleの商品ラインナップに組み込まれるという構造は、B2B製品としての楽天クラウドの評価が商業的な信頼水準に達したことを意味します。通信分野での知見をソフトウェア製品に変換し、グローバル市場で流通させるというモデルが、具体的な収益機会へと転換し始めたといえるでしょう。
一方で、三木谷氏が提唱する「エコシステムモデルの輸出」については、その実現可能性に対して引き続き慎重な目線も必要です。楽天モバイルが日本市場でエコシステムの恩恵を最大化できたのは、楽天市場、楽天カード、楽天銀行といった既存のサービス群との有機的な連携があってこそです。VEON傘下のBeeline Uzbekistanのような新興市場のオペレーターが同様の統合的エコシステムを構築するには、相応の時間と先行投資が求められます。MoU締結はあくまで出発点であり、実質的な展開においては各市場の規制環境やユーザー行動の違いが課題として浮上する可能性があります。
SamsungやNokiaとの検証成果が示すように、楽天クラウドネイティブプラットフォームのオープン性と相互運用性は着実に実績を積んでいます。コード変更ゼロでの統合という結果は、ベンダーロックインへの懸念を持つ通信事業者にとって有力な参入理由となるでしょう。ただし、本番環境での安定運用が長期にわたって証明されてはじめて、グローバル規模での採用拡大につながるものと考えられます。
楽天がMWCのメインステージで掲げた「Intelligent Growth」というテーマは、単なるマーケティングの言葉を超え、ソフトウェア、AI、エコシステムという三つのレイヤーで通信産業を再構築しようとする明確な戦略の表明です。この実現に向けた道のりは長く、競合他社の動向や資本効率の問題も残りますが、方向性自体が世界の通信業界に対して重要な問いを投げかけていることは間違いありません。
Rakuten showcases Intelligent Growth vision at MWC Barcelona 2026
https://rakuten.today/blog/rakuten-showcases-intelligent-growth-vision-at-mwc-barcelona-2026.html
