楽天と6自治体が「ふるさと住民登録制度」で連携。第二のふるさとを持つ時代へ

旅行で訪れた土地の風景が忘れられない、離れて暮らす地域を継続的に応援したい、都市部で働きながら地方の農業や地域活動にも関わってみたい。そのような思いを持っていても、これまでは「観光客」か「移住者」かという二つの選択肢で語られることが少なくありませんでした。しかし、地域との関係は必ずしも、短期間の観光と完全な移住のどちらかに分ける必要はありません。住民票を移さなくても、定期的に地域を訪れ、仕事やボランティアに参加し、自宅から特産品を購入することで、継続的なつながりを築くことは可能です。こうした「観光以上、移住未満」の新しい関係を制度として形にしようとしているのが、総務省が創設を目指す「ふるさと住民登録制度」です。楽天グループは2026年7月1日、北海道上士幌町、新潟県上越市、山梨県甲州市、長野県飯綱町、福井県高浜町、京都府京丹後市の6自治体と、同制度の社会実装に向けた連携を開始すると発表しました。今回の取り組みで注目されるのは、地域の魅力を紹介するだけではなく、「楽天トラベル」と「楽天市場」を組み合わせ、地域を知る、訪れる、働く、買う、応援するといった行動を一つの流れとしてつなごうとしている点です。楽天は旅行と買い物の接点を活用し、都市部などに住む人と地方自治体の間に、長期的な関係を生み出そうとしています。

楽天と6自治体が始めた新たな連携

今回の連携には、北海道上士幌町、新潟県上越市、山梨県甲州市、長野県飯綱町、福井県高浜町、京都府京丹後市が参加しています。楽天と各自治体は、地域の基幹産業などで深刻になっている担い手不足や、地域と継続的に関わる「関係人口」の拡大といった課題に対し、楽天グループのサービスを活用して取り組みます。具体的には、「楽天市場」内の特設ページ「集まれ!未来のふるさと住民2026」をリニューアルし、6自治体の魅力に加えて、農業体験、地域活動、ボランティア、一次産業におけるスポットワークなどの情報を紹介します。さらに、地域に関心を持ち、「ふるさと住民」として現地での活動や仕事を通じて地域に貢献する利用者には、対象となる宿泊施設で使える「楽天トラベル」の3,000円オフ以上のクーポンが用意されます。クーポンの内容や利用条件、上限枚数などは自治体によって異なるため、利用時には特設ページで詳細を確認する必要があります。一方、すぐに現地へ行くことが難しい人に向けては、「楽天市場」に各自治体の公式WEBアンテナショップを開設し、特産品やふるさと納税などを通じて自宅から地域を応援できる仕組みを提供します。現地で働く人だけを対象とするのではなく、旅行する人、体験に参加する人、特産品を購入する人、ふるさと納税を行う人までを幅広く地域との関係者として捉えているところに、今回の取り組みの特徴があります。

「ふるさと住民登録制度」とは

ふるさと住民登録制度は、実際にその地域へ移住していなくても、継続的に関わりたい自治体を選び、「ふるさと住民」として登録できるようにする構想です。住民票のある自治体とは別に、応援したい地域との公的な接点を持ち、その地域に関する情報提供や、地域ごとに用意されたサービスなどを受けられる仕組みが検討されています。楽天の特設ページでは、現住所や住民票をそのままにしながら、応援したい自治体と「観光客以上・移住者未満」の関係を築ける制度として紹介されています。地域での仕事やボランティア活動などに参加した場合、移動費や宿泊費の割引、イベントへの優先案内といった支援を受けられる可能性も示されています。ただし、現時点では全国一律の本格運用が始まっている制度ではなく、政府が創設と社会実装を目指している段階です。今回の6自治体のうち、北海道上士幌町と長野県飯綱町は、総務省の「ふるさと住民登録制度モデル事業」に採択されています。また、北海道上士幌町と京都府京丹後市は、二地域居住を推進するため、国土交通省の制度に基づく「特定居住支援法人」として楽天を指定しています。今回の連携は、単発の観光キャンペーンではなく、将来の制度化や二地域居住の普及を見据えた実証的な取り組みと位置付けられます。

特設ページ「集まれ!未来のふるさと住民2026」

今回リニューアルされた特設ページは、6自治体の観光案内を並べただけのページではありません。利用者が自分に合った地域との関わり方を見つけ、実際の行動へ移るための入口として構成されています。ページの冒頭では、「地域を応援したい」「自然豊かな場所でリフレッシュしたい」「都会では味わえない体験をしてみたい」といった思いを持つ人に向けて、ふるさと住民という新しいライフスタイルを紹介しています。また、地域との関わり方を考えるための「ふるさと住民タイプ診断」も掲載されています。新しい地域や文化へ積極的に飛び込む「探求タイプ」、地域の人や伝統に寄り添う「共感タイプ」、ITやビジネスなどの経験を地域課題の解決に生かす「貢献タイプ」という三つの方向から、自分に合った地域や活動を考えられます。地域への関心があっても、何から始めればよいのか分からない人は少なくありません。タイプ診断を設けることで、「移住するかどうか」という大きな決断を迫るのではなく、農作業の手伝い、ボランティア、特産品の購入、ワーケーション、二地域居住、オンラインでの地域プロジェクト参加など、複数の選択肢を提示しています。

「現地で応援」と「自宅から応援」

特設ページでは、地域への関わり方を大きく「現地で応援」と「自宅から応援」に分けています。「現地で応援」は、実際に地域を訪れ、農園で働いたり、地域のイベントを手伝ったり、観光や自然体験に参加したりする方法です。旅行と仕事、体験、地域貢献を組み合わせることで、通常の観光よりも地域の人や暮らしに近い関係を築けます。観光旅行では、有名な場所を訪れ、食事や買い物をして帰るだけになりがちです。それに対して、農作業や地域活動に参加すれば、生産者や住民と会話し、その土地が抱える課題や日常の営みに触れられます。一度きりの訪問が、その後も地域を気にかけるきっかけになる可能性があります。「自宅から応援」は、特産品の購入やふるさと納税などを通じて、離れた場所から地域経済を支える方法です。現地を訪れる時間が取れない人でも、地域の商品を選び、継続して購入することで、生産者の暮らしや地域産業、自然、伝統文化の維持に参加できます。この二つを分断せず、行き来できるようにしていることが重要です。最初は商品購入から地域を知り、その後に旅行で訪れる人もいるでしょう。旅行をきっかけに特産品のファンとなり、帰宅後も購入を続ける人も考えられます。農業体験を通じて生産者と知り合い、収穫時期になるたびに現地を訪れる関係へ発展する可能性もあります。

6自治体で見つける多様な関わり方

北海道上士幌町では、雄大な自然や酪農、畑作といった地域資源に加え、自動運転やドローン配送などの先進的な取り組みも進められています。特設ページでは、地域での「お手伝いバイト」、担い手活動と宿泊を組み合わせたプラン、保育園留学などが紹介されています。観光よりも一歩深く地域の日常に入ってみたい人にとって、参加のきっかけを見つけやすい構成です。

新潟県上越市では、中山間地域の暮らしを支えるボランティア、自然や食、温泉を組み合わせた体験、雪国の催しを手伝う活動、移住体験ツアーなどが掲載されています。海と山の両方を持ち、首都圏や関西方面からの交通アクセスにも恵まれた上越市は、観光、地域活動、将来の移住を段階的に検討できる地域として紹介されています。

福井県高浜町では、杜仲茶の収穫体験付き宿泊プランやビーチクリーン活動などが掲載されています。美しい海を楽しむだけでなく、海岸を守る活動にも参加できるため、観光と環境保全をつなげた関わり方が可能です。

山梨県甲州市では、加工用ぶどうや醸造用ぶどうの農業体験、ワインと食を楽しむ滞在などが案内されています。果物やワインを消費するだけではなく、その背景にある農作業や生産者の営みに触れることで、商品と地域への理解を深められます。

長野県飯綱町では、農業体験を行うワーキングホリデー、ワイナリーツアー、公式ファンクラブ「いいづなリンゴ部」などが紹介されています。りんごをはじめとする果樹栽培と地域の暮らしを結び付け、季節ごとに繰り返し訪れたくなる関係づくりが意識されています。

京都府京丹後市では、海と里山の自然、旬の食、SUP体験、地域の人との交流などを通じた多様な過ごし方が提案されています。「海の京都」と呼ばれる地域を観光するだけでなく、イベントや学びを通じて、その土地との関係を少しずつ深められる内容です。

6自治体には、北海道の大地、雪国の暮らし、日本海の海岸、果樹園、ワイナリー、海と里山など、それぞれ異なる特色があります。利用者は有名観光地としてではなく、「自分がどのように関われるか」という視点で地域を選べます。

楽天の狙いは「訪問」で終わらない地域との循環づくり

今回の発表から読み取れる楽天の狙いは、地域との接点を一度限りの旅行や買い物で終わらせず、複数のサービスを通じて継続的な関係へ発展させることです。「楽天市場」は、利用者が特産品やふるさと納税を通じて地域を知る入口になります。「楽天トラベル」は、対象宿泊施設で利用できるクーポンを通じて、地域での滞在を後押しします。現地では農業体験、スポットワーク、ボランティア、地域イベントなどに参加し、帰宅後は再び特産品を購入したり、次回の旅行を計画したりできます。この流れが定着すれば、地域との関係は「知る、買う、訪れる、働く、応援する、再び訪れる」という循環になります。楽天にとっても、旅行予約とインターネット通販を横断して利用してもらえる機会が増えます。ただし、今回の取り組みは単純なサービス利用の拡大にとどまりません。楽天が持つ大規模な会員基盤と、自治体が必要とする関係人口や担い手を結び付けることで、地域課題を解決するプラットフォームとしての役割を強める狙いがあると考えられます。楽天は2025年9月、ふるさと住民登録制度の社会実装を目指し、企業や自治体などで構成する「ふるさと住民応援コンソーシアム」を設立しました。楽天自身が事務局を務めており、今回の6自治体との連携も、その取り組みの一環です。今後は参加自治体を順次拡大し、地域と楽天会員を結ぶ仕組みを全国規模へ広げていく可能性があります。

地方の担い手不足を「短期間の参加」で補う

地方では、農業、観光、宿泊、地域行事など、特定の季節に人手が必要になる仕事が多くあります。一方で、年間を通じて新しい雇用を生み出すことが難しい場合もあります。そこで意味を持つのが、一定期間だけ地域を訪れ、仕事や活動に参加するスポットワークやワーキングホリデーです。例えば、果樹園では摘果や収穫の時期に作業が集中します。海辺の地域では夏の観光シーズンやイベント開催時に人手が必要です。雪国では冬の催しや地域活動の担い手が求められます。都市部などに住む人が旅行を兼ねて参加できれば、地域は必要な時期に担い手を確保しやすくなります。参加者にとっても、単なるアルバイトとは異なる価値があります。地域の産業を体験し、住民と交流し、普段とは異なる環境で働くことで、新しい知識や人間関係を得られます。宿泊割引などによって滞在の負担が軽減されれば、最初の一歩も踏み出しやすくなります。短期間の参加者が毎年同じ地域へ通うようになれば、地域にとっては一時的な労働力ではなく、地域の事情を理解する継続的な協力者になります。ふるさと住民登録制度には、このような「地域の外に暮らす担い手」を増やす役割も期待されています。

移住を前提にしないから関係を始めやすい

これまでの地方創生では、移住者の獲得が大きな目標として掲げられることが多くありました。しかし、仕事、家族、教育、住居などの事情を考えると、生活の拠点を完全に移すことは簡単ではありません。移住だけを成功の基準にすると、地域に関心を持っているにもかかわらず移住までは決断できない多くの人が、施策の対象から外れてしまいます。ふるさと住民という考え方は、移住できない人を地域との関係から切り離しません。年に数回訪れる、繁忙期だけ農作業を手伝う、地域のイベントに参加する、特産品を定期的に購入する、オンラインで地域プロジェクトに協力するなど、生活を大きく変えなくても続けられる関わり方を認めています。関係の濃さを一律に求めないことも重要です。最初は自宅から商品を購入するだけでも、地域について知るうちに現地を訪れたくなるかもしれません。何度か通ううちに、二地域居住や副業、将来の移住へ進む人も出てくるでしょう。移住を最初の条件にするのではなく、小さな関心を継続的な参加へ育てていく。この段階的な設計が、ふるさと住民登録制度の大きな意義です。

「第二のふるさと」を持つ時代へ

従来の「ふるさと」は、生まれ育った場所や家族のいる土地を指すことが一般的でした。しかし、働き方や家族の形、居住地の選び方が多様化した現在では、ふるさとは必ずしも一つである必要はありません。学生時代に暮らした地域、旅行で心を動かされた町、趣味を通じて知り合いができた土地、農作業を手伝った村、繰り返し特産品を購入している自治体なども、時間をかけて第二のふるさとになり得ます。第二のふるさとは、最初から用意されているものではありません。何度も訪れ、商品を選び、地域の人と話し、地域の課題を少しだけ引き受ける。その積み重ねによって、単なる目的地だった場所が「帰りたい場所」へ変わっていきます。地域側にとっても、外部の人は単なる観光客ではなくなります。地域の商品を継続して購入する顧客、繁忙期に作業を手伝う担い手、地域の魅力を発信する応援者、外部の知識や技術を持ち込む協力者になる可能性があります。楽天が目指しているのは、こうした人と地域の間にある小さな関心を、旅行、買い物、体験、仕事へと結び付け、継続可能な関係へ育てることだと考えられます。「住む地域」と「応援する地域」が別にあってもよい。複数の地域に居場所や役割を持ってもよい。そのような価値観が広がれば、人の暮らし方だけでなく、地方創生の考え方も変わります。今回の楽天と6自治体の連携は、制度の本格的な社会実装へ向けた一歩です。すぐに移住することは難しくても、特産品を購入する、体験に参加する、数日間働くことから地域との関係は始められます。これからは、ふるさとは「生まれた場所」だけではなく、自分で見つけ、選び、関係を育てていく場所になるのかもしれません。楽天の「集まれ!未来のふるさと住民」は、まだ見ぬ第二のふるさとと出会うための、新しい入口を提示しています。


楽天と6自治体、「ふるさと住民登録制度」の社会実装に向けた連携を開始
– 「楽天トラベル」と「楽天市場」を活用し、関係人口の創出と担い手不足を解消 –
https://corp.rakuten.co.jp/news/press/2026/0701_03.html

特設ページ「集まれ!未来のふるさと住民 2026」

地域の一次産業などにおけるスポットワークに関する魅力や詳細情報、「ふるさと住民」として現地で地域貢献するユーザーに対して宿泊費の補助として利用できる「楽天トラベル」の3,000円オフ以上のクーポン、各自治体が「楽天市場」に開設した公式WEBアンテナショップで購入できる特産品などを紹介
https://event.rakuten.co.jp/area/japan/furusatoresidents/